「おし、みんな集まったな。買い出しと場所取りに別れようぜ」


東雲が仕切る形で言うと、「じゃあ、俺ら場所取り行って来るわ」と数人の男女が離れていく。

残った東雲と俺と浜野と田村と結城と榊の6人で3か所に分かれて買い物をすることになった。


「たこ焼きと、焼きそばは必須だろ?あと、飲み物は適当に買うか」

「イカ焼き買いたい。あと、キャラクター焼きも!」

「お前のチョイスわけわかんねーな」


東雲が田村に突っ込むと2人はいつものように言い合いを始める。

でも、丁度いいんじゃね。こいつらを2人きりにしてやれそうだし。


「こら、そこ、2人で食い物適当に買ってこいよー」

「はぁ?なんで私が東雲と?」

「田村の食い物のチョイス、俺らじゃ分かんねーし。財布の中身考えたら東雲が付き添う方がいい」

「……まぁ、バイト代入ったばっかだから結構潤ってはいるけどな」


答えた東雲が俺にアイコンタクトを送ってきた。らしくない援護を素早くくみったらしい。


「じゃあ、結城、俺と飲み物買いに行かねー?」

「え?あ、うん」


東雲達を見送った直後に、浜野が声を張り上げて結城を誘っている。

東雲の話を思い出して、俺は一瞬息をのんだ。

べつに、東雲が言うように俺が結城の事を好きとかそういうわけじゃないし、2人が一緒にいたとしても別に関係ない。

浜野の気持ちを知ってしまった今、邪魔するのは悪い気もした。

結城だって、浜野と2人が嫌なら断るだろうし、そうじゃないなら俺が何かを言う権利はないはずで……。

頭では冷静にそう考えられるのに、なぜか胸の辺りが苦しい。
胃の辺りがムカムカする。吐き気なのか怒りなのか分からない。

てか、結城は別にいいのかよ。

東雲の話じゃ、結城だって俺の事を少しは好意的に見ているような話だったのに、浜野に誘われても別に嫌がったりしてねーし。
笑顔で二人で話しているところを見ると、案外喜んでるみたいだし?


「じゃ、じゃあ、結城行こうか」

「う、うん」

「……飲み物とか全員分とか重いじゃん?残りの4人で買いに行けばよくね」

「そうだね。みんなで行こうよ」


榊がうまい具合に賛成してくれて、浜野は明らかに消沈していたけれど、結局みんなで買いに行くことになった。

それでも浜野は結城の隣をキープして、俺と榊はその後ろを並んで歩いている。


「東条さ、人の事協力してる場合じゃなくない?」

「は?」


榊の言葉に思わず彼女の顔を見た。

榊は1年の時、男バレの夏合宿があった時に、臨時でマネージャーをしてくれたことがあった。

口数は少ないけど、部員に対する気の遣い方が母親みたいだった印象が強い。
顧問が夏合宿以外でもマネをしてくれないかと相談したみたいだけど、あっさりと断ったと聞いた。