燃えるようなオレンジと、向日葵と、大好きなあのコの笑顔が目の前にあった。
自分が今どこにいるのか分からなかったけれど、これはきっと夢だとそれだけは分かった。
現実の世界とはかけ離れた、幻想的な世界。まるでファンタジーの世界に紛れ込んだかのようだ。
「東条くん」
俺を呼ぶ、柔らかく響く声。
聞いているとホッとして、なんだか泣きたくなるような。
俺も名前を呼ぶんだけど、自分の声が耳に入ってこない。誰の名前を呼んでいるのか分からなかった。
分かるのは、目の前にいる女のコは、俺がずっと好きで好きで。
誰にも渡したくないって思っていたコ。
だから、告白したんだ。
好きだって。
「……のことが好きなんだ」
そう叫んだ。
驚いたような彼女の顔が可愛くて、やっと伝えられたことが嬉しくて。
でも、その後なんだかすごく嫌なことがあった。
なにがあったんだっけ?
「東条くんが、……の事を好きにならなかったら!告白なんかしなかったら!」
突如激しい電撃みたいな衝撃と同時に呪文のように繰り返される誰かの声。
耳障りな不協和音が俺の頭の中に響いている。
やめろ!やめろ、やめろ、やめろーっ!
頭を振って、その声を振り払おうとする。
けれどその声はどんどん俺の中に浸み込んできて、身動き取れなくしていくんだ。
「……くん、……東条くん」
誰かが俺を呼ぶ声がする。
それは今まで聞いていた不協和音とは違う。泣きたくなるくらい優しい音。
誰の声だったっけ?
視界に光が広がって、その先に見えたのはぼやけた誰かの顔だった。
「東条くん、大丈夫?うなされてたみたいだけど……」
「……結城?」
ようやく開けた視界に見えたのは、不安気な様子の結城の顔だった。
泣いているみたいに見える。
頭を抱えながら、ベッドから起き上がった。
寝る前より随分頭痛は楽になったみたいだ。
「お姉さん呼ぼうか?」
「……なんで姉貴?大丈夫だよ。ちょっと夢見が悪かっただけ」
「頭痛、治まったの?」
無意識になんだろう。小さなコの熱をみるみたいに、そっと俺の額に掌を当てた結城のその小さくて柔らかい手がなんだか気持ちがよかった。
「昔もさ、お腹が痛かったり、頭が痛いときに母親が手でさすってくれたんだよな。不思議と楽になって。あれってずっと不思議だったんだよな」
「看護って、手で見るっていうからね。人の体温に触れると気持ちが落ち着くし安心するんだと思う」
結城の手に甘えるみたいに横になってその手を受け入れた。
本当だ。痛みが和らいでいく気がする。
額に置かれた結城の手に自分の手を重ねた。
途端、ピクッと震えた結城の手を思わず強く握りしめていた。
けれどじきに結城の緊張がほどけて、されるがままになっている。
「東条……くん?」
結城が戸惑っているのが分かる。ただのクラスメイトの男子にこんなことされたら、きっとイヤに違いないのに、結城は優しいから仕方なく俺のわがままを許してくれているんだ。