「東条くん、大丈夫?」

「ちょっと、頭痛。でも大丈夫いつもすぐ治まるから」


不安そうな結城に平気だと答えて居間を出た。

立ち上がる時にふらつくけど、それだっていつものことで、ジッと寝てればじきに良くなる。


「姉貴、みんなの支度が終わったら言って。俺、自分の部屋にいるから」

「了解。ほら、東雲も朔の部屋に行ってなさいよ。女子がお着替えするんだから、あんたも邪魔」


居間から追い出された東雲は渋々俺の後についてきた。

2階に上がり部屋に戻ったら、倒れこむようにベッドで横になる。


「お前さ、最近体調わるそうだよな。この前の選手権大会の時も休んでたし。先輩ら心配してたぞ」

「んー、熱中症だと思うんだけど、最近頭痛とか体がだるいのとか結構多くてさ……」

「母ちゃんにいって病院行けばいいじゃん」

「みんな忙しそうだし、迷惑かけたくねーしな」


ベッドで横になっていると、起きている時は少し頭痛も、体のだるさも楽だった。

少し眠気も出てきたみたいで、東雲の声がまるで子守唄みたいに聞こえる。


「そういえばさ、お前らってどうなってんの?」

「んー?なんのことだ?」


東雲の声にぼんやりとした意識の中で答えた。
お前らと言ったそれが誰とのことを示すのか分からない。


「お前、あの日告白したんじゃなかったのかよ」

「告白?」

「あれからなんも言わねーし、お前らなんだか前よりも距離感じるし……田村も心配してたぞ」


体を起こすのはなんだか辛くて、そのままの態勢で東雲を見た。


「ごめん、マジで何言ってんのか分かんね」

「お前、そればっかだな。振られたのかもって思って触れないでいてやったけど……結城のお前を見る目は前と変わらねーのに。なんだか、お前だけが別人みたいだ」


東雲の話は自分と結城のことだったんだ。全然分からなかったわ。

それに、告白とかどういう意味なんだろう?


「結城が、俺に告白でもしてきたのか?」

「はぁ?」


東雲の呆れた顔が目前に迫ってきて、それでも避ける気力もない。


「お前、本気でどうにかしちまったのか?前ほど結城の話もしなくなったし……」

「なんで、俺が結城の話なんかするんだよ」

「なんでって、そりゃ、お前が結城に惚れてるからだろ」


俺が、結城に惚れてる?


『昨日、東条くん、私のこと好きだって……言ってくれたよね?』

突如頭の中で響いた結城の声に、胸がドクッと強く脈打った。

いつだったか、昼休みに結城が俺を呼び出してそんなことを言ってきたっけ。
あの時は結城でも人を揶揄ったりするのかと驚いたし、腹も立った。

だからついひどい言葉を言った気もする。