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最近の自分は、変だ。

そう思うことがたまにある。

朝起きていつも通りの1日を過ごしているのに、時々記憶が飛んでいるような気がする。
誰かと話している時も、何を話していたか分からなくなって、相手から訝しがられることもある。

何となく笑ってごまかしているけれど。特に夏休みの1週間位前からがひどい。


「東条くん?」

「ん?あぁ、結城どうした?」


今日は夏祭りの日。

休みに入る前に学校で結城に浴衣の着付けを頼んでおいたから、この日1年の時から遊ぶ時はいつも一緒につるむ男女5人のうち、女子だけが俺の家に集まっていた。

飲み物の準備をするためにキッチンに降りてきた俺を、手伝うと言ってついてきた結城の訝しむ視線に気付く。

今、俺どこまでしたっけ?

辺りを見回せば、ダイニングテーブルの上にトレイがあって、その上にグラスが並んでいる。

そうだ結城に頼んでグラスを並べてもらったんだ。
冷蔵庫にあるジュースを出そうとして、何をしてたんだろう、俺。


「冷蔵庫のオレンジジュース出せばいいんだよね?」

「ん?あぁ、そう。母さんが買っておいてくれたはずで」


言いながら冷蔵庫を開けて2リットルボトルのオレンジジュースを取り出す。

それを結城が受け取ってくれて、グラスに注いでくれた。


「東条くんのご両親って、土日もお仕事なの?」

「あぁ、2人とも介護職で夜勤とかもあるから土日祝日関係ないんだ」

「大変なお仕事だね」

「まぁね、でも小さい頃は家族よりも他人の世話ばっかしてる親の仕事のこと、嫌いだったな」


土日祝日関係ない仕事で、家族そろって旅行に行ったことも数えるくらいしかない。
勿論今は親の仕事は人の為になる、すごい仕事だって尊敬もしているし、親が大変な分、家の事は兄弟で助け合ってやっている。


「そうなんだ。でも、東条くんが人に対して優しかったり、気配り上手なところは、ご両親譲りなんだろうね」

「……そうかな。自分じゃそういうこと分からないけど」


グラスに注いだオレンジジュースを眺めていると、ふと不思議な感覚に陥る。

黄色に近いオレンジじゃなくて、もっと赤に近いオレンジを俺はどこかで見ていて、そのオレンジを思い出すと胸の辺りが苦しくて仕方なくなる。

どこでそんなオレンジを見たんだけ?


「東条くん……最近は頭痛どうなの?」

「頭痛?結城に話したっけ?最近気付くと頭全体が重たくって体がだるくなることがあるんだ。……これも一種の熱中症なのかな」

「……病院に行った?」


俺を見上げてくる結城の目が不安げに揺れている。


「大袈裟、水分摂って寝てりゃ良くなるから」

「でも……」


そんなに心配しなくても全然平気なのに。普段の生活に支障ないし。