「結城さん、彼に告白されたって勘違いしてたんだってね?」

「は?何言ってんの、あんた」

「嘘なんて言ってないし。東条くん本人から聞いたんだから」

「……え?」


山見さんの言葉に、息が止まりそうなくらい驚いて、そして苦しくなった。

東条くんが私との会話を山見さんに話したってこと?


信じられない気持ちでいっぱいだった。
私の知っている東条くんは、そんな無神経なことをする人じゃなかったから。
だから、違うって思いたいのに……。


「気持ち悪がってた。妄想じゃないかって言ってたし」

「……!」


山見さんが言う言葉は、今日私が東条くんに直接言われた言葉だ。
本当に、彼が山見さんに話したんだ。私とのこと。

それに、今彼女は東条くんに告白をしたって言ってた。
昼休み、東条くんが話した言葉を思い出す。

『他のクラスの子に告白されたんだよね。結城さんのそういう冗談聞かれると誤解されるから、もう二度とするなよな』

もしかして、その相手が山見さんなんだろうか?


「山見、いい加減にしなさいよ」


さなちゃんが怒りをあらわにして山見さんに近づいていき、彼女の肩をドンとついた。


「痛い、暴力反対」

「はぁ?それならあんたは言葉の暴力でほたるを傷つけているのが分からないの?」

「私は嘘は言ってない。東条くんが迷惑そうにしていたから、教えてあげただけ。感謝してほしいよ」

「な!」

「さなちゃん!もういいからっ、」


今にも掴みかかっていきそうな、さなちゃんの腕を掴んで引いた。
そのすぐ傍で、山見さんが私に向ける視線は冷たくて痛い。


「ほたる?」

「もう、いいから。さなちゃん、帰ろう?」


渋々といった様子でさなちゃんは手を下ろし、私に引かれるまま歩き出す。


「山見!お前こんなところにいたのかよ」


突然聞こえた声に、私もさなちゃんも足を止めた。
声の持ち主を振り返って、それが東条くんだと分かると、私は咄嗟に顔を背けた。

今自分がどれほどひどい顔をしているか思い出したから。


「東条くん、ごめん。待ち合わせの場所、ここじゃなかったね」


山見さんの弾むような声が胸に刺さる。
2人はどこかで待ち合わせをしていたんだ。
一緒に、帰るため?

2人はもしかして付き合うことになったの、かな?

東条くんの顔を見る勇気はなくて、2人の会話を聞いているうちに心臓が痛い位に締め付けられる。