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「ほたる、平気?」
6時間目終了のチャイムが鳴って少しした頃、保健室のベッドにいた私の下にさなちゃんがやってきた。
タオルケットを頭から掛けて、ミノムシみたいなカッコで目をつむっていた私は、彼女の声にゆっくり顔を出した。
「ほたる……目、腫れてる」
さなちゃんに言われなくても、分かっていた。両方の瞼が重たくて目が十分に開かないから、きっとひどい顔になっているんだろうなって。
昼休みに勇気をだして東条くんを呼び出した。
昨日の告白の返事がしたくって、朝からの態度に怒っているのは私が返事をちゃんとしなかったからだって思ったから。
だからちゃんと告白の返事をしたら、東条くんはきっと笑ってくれるって信じていた。
それなのに、彼の口から紡がれた言葉は信じられない位、冷たくて痛い言葉だった。
「ひどい、顔でしょ?なんかね、私勘違いしていたみたい。東条くんすごく迷惑そうだった。……白昼夢ってのかな、私きっと自分の都合のいいように、昨日の事捏造してたのかなぁ……」
「ほたる……」
さっきの東条くんは本当に迷惑そうだった。
私を見る目がすごく冷たくて、軽蔑するみたいな、そんな感じだった。
「私、恥ずかしいよ。ひどい妄想。東条くんに軽蔑されても仕方ないよ」
「ほたる、もういいよ。もう、東条のこと考えるのやめなよ」
さなちゃんが制服のポケットからハンカチを取り出して、私に渡してくれる。
それを見て自分が泣いていることに気付いた。
さなちゃんのハンカチを受取り、目元にあてる。
そのハンカチがどんどん湿っていくのに、さなちゃんの可愛くて肌触りのいいガーゼのハンカチが汚れちゃうのに、私は涙を止められない。
悲しいのを通り過ぎて、もう苦しい。
泣きすぎたせいか、目も、頭もすごく痛い。
早く泣き止まなきゃ、さなちゃんも困るのに。
でも。
「さなちゃ、ごめんね。ハンカチ洗って……返す、ね」
泣きすぎて吃逆迄出てきた。
うぅ、情けない。
好きだったヒトからの言葉を勘違いして受け止めて、それで嫌われて、泣きまくって授業までさぼるなんて。
情けなさ過ぎるよ、私。
「ほたる、私教室からカバン持ってくる。HR終わったら、一緒に帰ろう」
「……あり、がと」
さすがにこの顔のまま教室に戻ることはできなかった。
東条くんに見られたら、どう思われるか。
こんなひどい顔、他の人達に晒せないから、さなちゃんの申し出は有り難かった。