でも、言えたんだな。俺。
人生初の告白を終えて、目的達成の解放感というのか、勿論結城の反応は気になったけれど、それでもホッとした方が大きかった。
結城の驚いた顔は可愛かったし、まだずっと見ていたいとも思った。
でも、すぐに返事をもらえるとも思っていなかったから、俺は「呼び出して悪かったな、じゃ、また明日な」と、半ば言い捨てる形で結城から離れた。
うっわー、マジ緊張した。
みんなどんな風に告白とかしてんだろ。緊張感半端ないし、未だに心臓バクバクだわ。
校門を出て、家迄の道をダッシュする。
告白という人生最大のミッションをクリアした俺は、自分の荷物を学校に置いたままだってことをすっかり忘れていたのだ。
「最悪!何でスマホ、ポケットに入れておかなかったんだろ、俺」
体一つで自宅に帰った俺は、スマホもカバンの中に入れたままだったことを思い出して、渋々学校へ戻った。
すっかり日は暮れていて、けれどグラウンドにはまだ野球部が練習していた為ライトもついて明るかった。
教室に向かい、机の上に置いたままだったカバンを引っ提げて、急いで校舎を出た。
カバンの中をスマホを探しながら歩いていると、ふと視界に人影が写って、野球部か先生か、なんて思っていたが、制服姿は女子のものだと気づいて、その人影を何となく追っていた。
あれ、山見か?
人影は隣のクラスの山見 モカだった。
1年の時に同じクラスで、文化祭の時には同じ舞台美術の係だった。
どちらかと言えば大人しくて目立たないタイプの彼女とは、あまり喋った記憶がない。
彼女はついさっき俺が結城に告白をした向日葵の花壇の前に佇んでいた。
一体何をしているんだろう?
声をかけるのも躊躇われる位、真剣な表情で花壇を見て……いや、睨んでる?
グラウンドのライトから逆光になっているせいで、山見の方から俺の姿は見えて居ないみたいで、俺には気づいていない。
ま、いいか。
別に山見が何の目的でそこにいたのか俺には関係のないことだと思い、そこから離れようとした。
直後、ザッと何かを蹴るような音がして振り返ると、いつから持っていたのか山見がスコップを花壇に突き立てているのが見えた。
土いじりなんてレベルの音じゃない。乱暴で、容赦ない様子で、向日葵の花の根本を掘り返している。
「なに、やってんだよ!」
その花壇は結城が丹精込めて、種から向日葵を育てたんだ。
『向日葵結構伸びたよ』って、笑顔で話していたんだ。
それを、何の権利があって、こんなひどいことをするんだ?
思わず声を上げていた。
怒りが込み上げてきて、驚いた様子で俺を見た山見に駆け寄る。