さんざん揶揄われて、だけど、そのおかげで踏ん切りがついたところもある。

男バレの仲間も、結城の友達の田村も、俺の気持ちを知っている。

そうして後押しするみたいに結城に関する情報をくれる。

だから、つまりは、頑張れってことなんだろう。

そんな風にされたら、俺がしなきゃならないことなんて決まってる。

堀元先輩にも、野球部の3年にも、他の誰にも結城を取られるのは嫌だ。


「結城、ちょっといい?」


放課後、帰り支度を済ませて教室を出て行く結城に声をかけた。

自慢じゃないけれど、告白なんて初めてで。

高校生にもなって、誰にもこんな時どういう風に言えばいいのか相談する事も、カッコ悪くってできなかった。

結局ぶっつけ本番みたいな覚悟で、俺はいつか結城が見せてくれた、彼女が種を撒いて育てたという向日葵の咲く花壇へ結城を連れて行く。

夏の太陽はゆっくりと名残惜し気に暮れていくから、オレンジや、紫がかった幻想的な空の色がいつまでも尾を引く。

見上げた向日葵の向こうには、そんな不思議な色を纏わせた太陽が俺のことを応援しているのか、叱咤しているのか、その存在がかなりの圧迫感だ。

『しっかりしろ』『男らしく堂々と言え』『いつまでもウダウダ悩むな』

そんな声がどこからともなく聞こえてくる気がする。

こんな風に緊張したのは、高校の個人面接の時以来……イヤ、あの時の比ではない。

震える指先をギュッと握りしめる。

掌に滲む汗がべたついて気持ち悪い。

俺の後ろにいる結城を見ることもできずに、ただ睨むように向日葵の向こうの太陽を見た。


「東条くん?」


いつまでたっても黙ったままの自分を訝しく思ったのか、先に口を開いたのは結城だった。


「向日葵、結構伸びたんだよ」


気が抜けるような、フワンとした声音が鼓膜にしみこんでくる。

そうだ。俺、結城のこんな風に周りを優しい空気に変えてくれるところが、ずっとずっと好きだった。

そんな風に思ったら、結城の顔が見たくなって、振り返って結城を見た。

ホッと安心したような顔で笑ってくれる結城。

たったそれだけの事が嬉しくて、滑るように口にしていた。


「結城、俺、あんたの事が好きなんだけど」


情けねー、声、震えたし。

俺の言葉を聞いてどう思ったのか気になって結城の顔をジッと見つめれば、彼女は口をポカンと開けて、言葉もなく俺を見ていた。

驚いたんだろうな。

まさか、俺に告白されるとか想像もしてなかったんだろうな。

でも、驚いてはいるけど、迷惑そうには……見えないよな?

自信がなくて、はっきり断言はできなかった。