「やっぱり、堀元先輩って結城狙いなんだ」
背後からのしかかってきたのは、東雲だった。
無駄に長い手足が絡みついてくるから暑くて仕方がない。
「暑いから、」
いつものように東雲の胸を肘で押す。
いつもの事だから、いつものように簡単に離れると思ったのに、東雲はさらに絡みついてくる。
「お前は、いいのかよ」
「は?」
まさか、こっちに振られるとは思わなかった。
てか、いまなんて言った?こいつ。
見上げた先にあるのは、腹がたつくらいに端正な顔立ちの東雲の呆れ顔。
「1年の時にもちゃんと警告してやったのに、お前未だに動かないからさ、見ててじれったいわ」
「……なんのことだよ」
「あー、今更誤魔化すとかナイ。お前が結城の事を好きってのは、バレー部2年生には周知の事実だわ」
「は?」
「お前、全然気づいてねーのな。愛猫の事を話すのと同じ目で、結城の事見てるくせに。どんだけ鈍いんだ」
「に、鈍い?」
「鈍いのは、この場合結城の方なんだろうけどな。それにお前少しは否定しろよ。結城は猫と同じレベルなのかって」
「なんだ、東雲の言う通り、朔弥って俺らに気持ちバレていないって本気で思ってたんだ?」
東雲の言葉に呆然とする俺に、追い打ちをかけるように現れて宣うのは、男バレの2年レギュラー陣。
唖然とする俺をよそに、みんなしてはるか向こうで結城を口説いている堀本先輩の方を見ながら俺の意気地のなさを、これでもかって程に責め立てている。
「な、なんだよ。お前らみんなして……っ、」
唖然、茫然から何とか復活した俺は、今度は猛烈に襲ってくる羞恥心を戦うことになった。
こんなのってないだろ。
俺の秘かな恋心をみんなして知ったうえで、生温かーく見守っていたってことかよ。
「朔弥って、すっげ独占欲強いよな」
「……」
「結城が応援に来てるときの朔弥のテンション超高いしな」
「……っ、」
「この前なんかさ、タオルちゃんとあるのに忘れたふりして結城にタオル借りてたよな?」
「……!!!」
悉く馬鹿にして揶揄ってくる仲間達に返す言葉もない。
でも、でも、でも!
「おっまえらぁ!いい加減にしろっての!人の事揶揄ってんじゃねーよ」
意外じゃなく、俺は短気みたいだ。
あっという間に散らばった部員達を、次から次に追いかけ、捕まえて、ヘッドロックかましてやった。