「それ、ほたるが撮ったやつでしょ?」
背後からスマホを覗き込んできたのは、1年の時にも同じクラスで、結城と仲のいい田村さなだった。
友達って、似たような人間が集まると聞いたことがある。
それを考えれば、田村も結城と同じタイプだ。目立つ感じじゃないし、不必要に敵を作らないタイプ。
結城とは対照的な、フワリとゆるく癖のついた髪が肩の辺りで揺れている。
結城のサラサラの栗色の髪は、2年になって少し伸びたみたいでたまに一つに束ねられていることもあった。
俺は、おろしてる方が結構好みなんだけど。
まぁ、そんなこと死んでも言えないけど。
「あぁ、俺、結城のおかげで、結構花に詳しくなれたかも」
「男子が花に詳しいのも、なんだか微妙だけど、それがほたるのお陰だって聞くと友人としては嬉しい」
「……結城は?今日は一緒じゃねーの?」
大体いつも一緒にいる田村の傍に結城の姿が見えなくて、何とはなしに尋ねていた。
「ほたるはねー、3年のバレー部のエースに告られ中なのですよ」
田村の変な口調に引っかかって、その話の内容を危うく聞き逃すところだった。
バレー部の3年のエース?
それって、堀本先輩じゃね?
堀本先輩って、結城の事が好きだったの?
全く気づけなかった情報に、俺の頭は早くもカオス状態。
「……告白ってのは、嘘だけど、あの先輩って多分ほたる狙いだよね」
「冗談ばっか言ってんなよ」
告白が嘘だって聞かされて、なんだか揶揄われていたみたいで腹が立つ。
「冗談じゃないよ?ほたる園芸部に入ったでしょ?堀本先輩ってば、ほたるの当番の時、水やりとか手伝ってるって聞くし」
「……結城、嫌がってんじゃね?」
「あー、まぁね。ほたるって自分の仕事手伝わせるの、気が引けるって言ってるし。でも堀本先輩ってめげないんだよねぇ」
「そっか」
それ以外何も言えなかった。
1年の時の東雲しかり、堀本先輩しかり、人が人を好きになるのを邪魔なんかできない。
堀本先輩がどういうつもりなのか知らないけど、結城に対して本気なら俺は何も言えない。
いや、言えないけど、邪魔したら駄目なのはわかるけど。
でも、気持ちは穏やかではいられない。
イライラした様子だ田村に伝わってしまったのか、田村は呆れた顔で大きく溜息を吐いた。
「……なんだよ」
「いーえ、分かりやすいなって思って」
その言葉の意味が分からないほど鈍いつもりはないんだけど、えてして上から言われると腹が立つよな。