「嘘!ほたるやったじゃん!!」


私の両手を掴んで、ブンブン振り回して興奮するさなちゃん。

想像通りの反応を見せてくれるさなちゃんに、ほんの少し救われた気分になった。


「私も信じられないけど、多分夢じゃないって思う」

「いやぁ、でも、私からしてみれば、やっとかって感じだけどね。東条くん絶対ほたるの事好きだって思ってたもん。1年時の事を知っている子達が聞いてもきっとそう思ってるよ」

「そう、かな……」


今朝迄の私だったら、さなちゃんの言葉に照れ臭いけど、嬉しさの方が勝って、素直に喜べたと思う。

でも。


「それにしても、東条くんも短気だなぁ。告白の返事がすぐもらえないからって、怒ったりするなんて」

「でも、何も言わずにいたのは、やっぱり感じ悪かったと思うし」

「うーん。こうなったら、今すぐにでも東条くんに返事をしておいで」


さなちゃんの小さな手が私の背中をグイグイと押す。

その手に後押しされて私も心を決めた。


「と、東条くん!」


バレー部の先輩に連れていかれた東条くんは、案の定体育館でバレー部の人達とネットを張ったりしていた。

昼休みだから、バレー部以外の人もたくさんいて賑やかだったから、私の声に反応したのは、バレー部の人の一部と、名前を呼ばれた東条くんだけだった。

ネットを張る途中だった彼は、そのロープの先端を隣にいた人に渡して、私のところまでゆっくり歩いてきた。


「なに?」

「あ、ごめんね。忙しい時に」

「別にいいけど……」

「ちょっと、時間もらえるかな?」


なんだか、こうして向き合っているのに、すごく距離を感じる。

間に高い壁とか、深い溝とか、そんなのがありそうな。

やっぱりいつもとはなんだか雰囲気が違う。

それでも東条くんは、私が進む後をついてきてくれた。

体育館の裏手迄来ると、丁度人もいなくって、ここならと思って私は思い切って口を開いた。