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夏の夕暮れは、オレンジとか赤紫とか、温かい色が混ざり合っていて、
眺めていると、とても優しい気持ちになった。
大好きな向日葵が咲く校舎前の花壇で、私はキミが紡ぐ言葉の全部を、
そんな優しい景色の中で聞いたんだ。
「結城、俺、あんたの事が好きなんだけど」
彼、東条朔弥(とうじょうさくや)くんは、景色と同化しそうな程の
色に染まった顔で、まっすぐに私を見た。
少し声が震えているように聞こえたのは、彼が緊張しているからなんだろうか?
彼の一生懸命な瞳に、圧倒されて、私は口をあけたまま彼を見返すことしかできなかったのだけど。
そんな私の事を、彼はどう思ったんだろう?
黙り込んだままの私に答えを急かすこともなく、まるで自分の仕事は終わったとばかりに息をついて、そうして背中を向けて走り去ってしまった。