「…茜のお母さんだ」
私はあの葬式以来、茜のお母さんを見ていなかった。
それは、すぐに分かった。
隣の男性に寄り添うかのように、茜のお母さんは笑っていた。
「つてからは、茜のお母さんは会社の事務で働いて、そこでお世話になった先輩と今度結婚するらしい。だから、もう心配すんな」
天沢さんはそう言って、私達三人の頭を右手で置き、撫でた。
芹沢は天沢さんの行為に、やめろと言いながら、少し照れた様子で天沢さんを見る。
私は、涙が溢れていた。
「…和歌ちゃん!どうしたの」
天沢さんは心配そうに私に声をかけてくれた。
「…いえ、何も」
私は涙目をしながらも、いつもより笑顔で答えた。
「あら、和歌ちゃんが笑ってるのは。作り笑顔じゃない、本当の笑顔を初めて見たわ。芹沢となんかあったのかな?」
店長は、からかうように私たちの関係をいじってきた。
「母さん。和歌さんと暁をいじるのはやめてよね。見れば、分かるだろう。もういいんだよ」
海里くんはそう言ってから、私達を見た。
海里くんは何かを察したのか、目を細めて私たちを見ていた。
「みんなが揃うのは、茜ちゃんの自殺する前に一回揃った以来ね。あの時は確か、茜ちゃん以外このメンバーだったわね。今回は茜ちゃんのいとこ、和歌ちゃんがいるし」
店長は海里くんの隣に座り、みんなに訴えていた。
私は茜がこのメンバーと集まって飲んでいたことを想像した。
茜は変わらず笑顔で楽しんでいたのだろう。眼に浮かぶ。