「お前はいいよな。誰かが死んでも楽しそうにしてって」

芹沢は両足に肘をついて、頭を抱えていた。

なんで、芹沢にどういう経緯で言ったのかは分からない。

だけど、笑っているのは楽しいからじゃない。

笑わないと、日々を過ごしていけないから。

「…芹沢はそのこと、誰かに言ったの?」

「言えないよ、誰にも。海里にも天沢さん、親には」

誰にも言わないで。ここまで。

「な、なんで私には言ったの?」

私の方へ向き、芹沢は私を見る。

「……あんたには、俺と同じ匂いがした。誰かと分かち合いたいのに、大切な友達にも何も言えない。抱え込んで抱え込んで心の底で吐いているような」

私は芹沢を目を丸くして、見た。
あんたは、なんで私が抱えていることを。

「……っ、私は……」

走馬灯のように私は抱えているものが湧き出てくるように言葉を紡ぐ。

芹沢は黙って私を見る。

「……っ……誰かに必要とされたかったの。私には無関心で空気みたいな扱いじゃなくて、人としてみて欲しかった」

私は下を俯いた。

周りには人がいなくなっていて、私たちしかいなかった。

乾きった髪は、近くにあった扇風機でヒラヒラと髪がうねる。

芹沢は私に優しく呟く。

「…誰にみて欲しいっていうのは、俺も同じだ。茜もそうだったんだと思う。人の気持ちを知らなかったんだ」

「…あはは。芹沢は私の死ぬ時が分かる
って言ったでしょ。それいつか分かる?」

 私は何故か笑いながらも芹沢に一番聞きたかったことを口にする。

「ああ、わかる。だけど、俺は必要だと思ったら教えるよ」

「そう。そっか」

 私は笑った。何も考えずに。

「何笑ってんの」

私は、いつも以上に笑った。

なんだかよく分からないけど、芹沢に話したら心が晴れた。

生きる意味なんて、今もどこにも見出せない。

だけど、誰かが分かってくれた。

それだけで、嬉しかった。

「…海喫茶店に行こう」