芹沢は1番親しい海里くんにも言えなかったんだ。

茜を好きだからこそ、誰にも言えない心の闇を抱えていたんだ。

「芹沢はちゃんと茜を好きだったんだね」

「……ああ、そうだよ。だけど、1番大変な時に茜を支えられなかったんだ」

泣きそうになる目を両手で覆った。

「……なんで、そう思うの?」

「……俺が、茜を殺したも同然だから」

「はあ? 何言ってんの。芹沢はただ茜が自殺したのはこの目で見てるんでしょ」

「……ただ、見ているだけだった。それがどんなに辛いか分かるか。茜が自殺する前に、俺は茜と喧嘩したんだ。あんなに悩んでいる茜なんて、どうでもいいように。それから俺は忙しくなって。一週間後、忙しさがなくなってきた頃に、茜は自殺を図って亡くなった」

「……悩んでいる茜をどうしてほっといたの?」

「あの時俺は自分のことしか考えてなかったんだよ」

「…それでも、なんで、茜をほっといたの!茜がつらいのはわかってたでしょ。どうして」

芹沢に問い詰めるかのように、私は聞いた。

「……ゴメン、茜」

芹沢は、男、女湯から出てくる人達は、なんたなんだといわんばかりに芹沢を見ていた。

だけど、芹沢は、お構いなしにボロボロと泣いていた。

私は芹沢を淡々と見ていた。

ボロボロで泣く芹沢に、私はただ見ていることしか出来なかった。

「…芹沢」

私は芹沢の名前しか呼ぶことができなかった。

ただ、泣く芹沢にどうしようもなくなって。

「……そ、れがら、俺はうつ状態になって、部屋でいつのまにか右腕にリストカットしていた。その時、中三になってからだった。茜が死んですぐにはならなかった。けど、あるクラスメイトから言われたんだ。何気ない一言だったけど、俺は追い詰められて、一週間休んだ」

いつもの芹沢とは少し違ったけど、今の方が人間らしい。

「……なんて言われたの?」

私は目を赤くしながらも、私の質問に答えた。