「芹沢は?」

私はその態度に違和感を感じつつも、芹沢に聞く。

「分からない。何もかもが。ただ、生きている心地がしないだけ」

芹沢は私をチラッと見てから、私の質問に答えた。

「あんたは、いつ死ねのかは分かるんだろ。だったら、自分のことは分からないの?」

私は芹沢に言ってはいけないことを言ってしまった。

芹沢は下に俯き、言葉に詰まらせた。

「……自分のことは分からない。…分からないんだよ。…申し訳ないが、今日はこれで終わりにしよう。一人にしてくれ」

芹沢は注文したドリンクを待たずに、千円を置いて、スタスタと早足で駆けていく。

「ちょ、芹沢」

私は駆けていく芹沢を追いかけた。すれ違い様に、店員は私に声をかけてきた。

「あ、注文はどうなさいますか?」

「すいません。なしでお願いします。すいません」

私は千円を左手に持ちながら、前に走る芹沢を無我夢中で追いかける。

「芹沢!」

私の声なんて聞こえないほど、芹沢は私より遠くに走っていく。

私が芹沢の名前を言うと、天気が曇りになってきた。

ゴォゴォ ゴォゴォ ゴォゴォ

いきなり雷が鳴り響いた。

私はそんなことなどお構いなしに、芹沢の元へ走った。

別に。

芹沢のために、やっているんじゃない。

ただ、芹沢はなにを悩んで、なにを考えているのかを知りたい。

知りたい。それは、茜も同じ気持ちだったはずだ。