そう言って彼は、ニコッと不自然な笑みを零した。

「…普通じゃないよ。芹沢」

「…確かに普通でないかもな。あの女の子が亡くなったのは、元々持病があって治療していたんだけど、それがひどくなってきた。彼女は学校に通いたいって、薬を飲みながら、治療していた。だけど、今日急に持病が悪化して、お昼くらいに亡くなる。彼女と一限目にすれ違って分かった。それで、傍にいたクラスメイトに聞かれたから、答えて広まってしまった」

芹沢は女の子が倒れた現場を見つめていた。

「…じゃあ、なんでその女の子を助けなかったの。わかっているなら、助けたら倒れることなんてなかったはずでしょ」

私は芹沢に問い詰めるように芹沢を見る。

「…もう決まっているんだよ。死ぬ日・時間は生まれた時から。だから、俺が助けたとしてもどうにもできないんだよ」

芹沢は現場を見ながら、目を細めて少し悲しげな表情でただ見つめていた。

何かを思い出しているかのように。この男は、何があったの。

「じゃあ、用は終わったから。俺はこれで」

芹沢はズボンのポケットに両手を入れてから、去っていこうとした。

私は後ろ姿の芹沢に何か言おうとしたが、何も言えなかった。

芹沢が抱えていることが分からないから。

どうしようもなかった。