初日のバイトから夏休みが終わる一週間前になっていた。

海喫茶店のバイトは、順調に仕事をしている。

まだ、慣れないところはあるけど、楽しくなってきた。

一応、夏休み限定だけど。それなりに楽しんでいる。

「おい、和歌。これ持ってけ」

芹沢は相変わらず私には冷たいけど、ひとつ変わったことがある。

海里くんが茜の自殺の件を私に話したということを芹沢に話したら、険悪なモードで海里くんを見ていたらしい。

だけど、芹沢と海里くんの症状を私に伝えたってことを知った時、驚いた顔をしていた。

芹沢は海里くんの行動をなぜ信頼している理由は分かった。海里くんは相手の心が読めるから。

何も話さなくても、芹沢は海里くんを信頼してるんだ。

それからだ。

芹沢が私に名前を呼ぶようになったのは。

「何してんだ。これこの客に。早く!」

だが、現実は厳しい。

芹沢は鬼のように私に指示してくる。

店長でもないけど、1番しっかりしている芹沢しか適任者はいないのが現状。

ってか、店長何してんだよ。

芹沢はまだ本当の心の中を見せてくれない気がする。

まだ、何かを後悔しているような。芹沢の目はどこか遠くを見つめている。

海里くんとは少し違う。

目が現実ではないどこかへ向けられている。

「…はい」

私は返事をして、お客の元へと食事を運んだ。

海里くんは受付で会計をしていた。

女性陣は海里くんや芹沢を見ると、ぎゃーかっこいいと言いながら、女性達は帰っていた。