「ああ、一年前から数学の教師はやっているよ。定時制高校。だけど、喫茶店のオーナーやっているとはなんか恥かしくて言えなかった」
なるほどね。きちんと仕事は知っているわけだ。
だけど、引っかかることがある。
茜はなんで一人の時に飛び降りなかったんだ。誰かがいるからではないか。
「茜はなんで、一人の時に飛び降りようとはしなかったのでしょうか」
「……分からないよ。それは。茜しか知らないから。だけど、和歌さんと話していて思ったんだよ。何故か雰囲気が似ているんだ。茜と」
海里くんはニコッと微笑み、私を見てきた。
「雰囲気。私そんなこと言われたの初めてで、茜とは正反対の性格だから」
私はそう言うと、天沢さんは首をひねり私に言う。
「……いや、そうかな。似ているところはあると思うんけどな」
不思議そうに天沢さんは私を見つめていた。
「そうでしょうか」
私は返事をした。すると、海里くんが言葉を発した。
「話は変わるんだけど、茜の母さんとは連絡は取っている?」
「……いや、取れてないよ。葬式以来ずっとどこにいるかわからない」
「そうか。あと、言い忘れてた。暁がああいう風にいつ死ねかを分かるようになったのは、茜の自殺以来から。だから、暁は自分の意思で見えたくて見てる訳じゃないんだ。そこは、理解しておいてほしいので」
海里くんはそう言って、カフェオレを一口に飲んだ。私もカップを持ち、紅茶を飲んだ。
話をずっと聞いていたせいか喉が渇いていた。話は過去の話なのに、タイムスリップしたみたいに身体が固くなっていた。