暁が本当に下に落ちそうだったので、僕はまた叫んだ。

「…暁!もうやめろ。今叫んだとしても、茜は嬉しくないはずだ。まず、茜が助かることを祈ろう」

僕は暁の胸ぐらを掴んで、安全な所へ投げた。
暁は驚いたように、僕を見てくる。

「……っ。海里。お前いついい男になったんだよ。…茜のとこに行くぞ」

暁はそう言ってから、立ち上がって僕を見た。 後ろに振り向き、暁は心配そうに見つめていた。

「…暁。大丈夫だよ。行こう」

僕がそう言うと、いつもの暁に戻っていた。

「ああ」

暁は屋上のドアをバンっと開けて、僕達は走り出した。

茜が倒れている花壇に休むことなく、走って、走って茜をちゃんと見たい。
茜はまだ生きているかもしれないから。

「…茜!」

僕達は、茜を呼んだ。茜は頭から血が出ていて、足にも怪我をしていた。僕達が来た時に、救急車がやってきた。

救急隊員の人が茜を運び入れ、救急車に乗って近くの病院まで運ばれた。
僕達はまだ授業があるので、天沢先生が救急車に乗っていた。

僕達は通常通り授業を受けたが、頭から何も入らなかった。校内では、騒めき立っていた。

中学二年の女子が自殺を図ったと。

終わった後、すぐさま大学病院にいる茜の元へ、暁と一緒に向かった。

茜の教室を通り過ぎた時、茜をいじめていた美咲が僕達が聞こえるほどの大きい声で言った。

「……あは、死んでも当然じゃん」

そんなことを美咲は言っていた。

周りは美咲に合わせて、笑っていたのだ。

誰も茜が苦しんでいるのに、誰も悲しまないの。

暁は、おいと言って、茜のクラスに行こうとしていた。だけど、僕は暁の腕を掴んだ。

「…暁。今行っても僕達が解決できないよ。まず、茜の所に行ってから解決しよう」

僕は冷静にかつ丁寧に周りを見て、暁に言った。その時の僕はいつもより、周りが見えていたんだ。この頃から、僕の能力が開花し始めたのは。

「………っ、だな」

僕の腕を離して、前へと進んだ。