「…茜! 僕達は、茜が何を抱えて、何に悩んでいるか知りたいんだよ。だから、お願い。聞かせて」
「……海里。海里には助けられてばかりだったね。いつも気にかけてくれて、感謝しきれない程いつもいてくれて、本当にありがとう」
茜は前に行こうと足を踏み出しそうになっていた。
それを僕は止めるため、茜に叫んだ。
「茜…っ! まだ、話すことがたくさんあるよ。暁も天沢先生も僕も、僕たちは茜と話がしたいんだ」
僕は必死に説得したんだ。だけど、茜は一旦前を向き直してから、僕達を見据えた。
「……暁、海里、天沢先生。今日まで本当にありがとうね。また、どこかで会おう…」
そう言ってから、僕達は茜が飛び降りそうだったので、同時に走り出した。
かすかに聞こえたんだ。ありがとうって。
茜が口を開いて言った後、僕達は茜を救うことができなかった。
バンっと変な音がしたんだ。
恐る恐る、下を見ると茜が血まみれになり、倒れていた。
「早く行こう。救急です。至急、都立西中学校で屋上から飛び降りた女性一名重症です。はい、よろしくお願いします」
天沢先生は、すぐに屋上のドアを開けてから、救急車を携帯で呼んでいた。
「……茜、茜ー!」
暁は飛び降りた茜を見下ろしていた。
「…暁。危ないよ」
暁は僕の言葉なんて聞いていなかった。
ただ、血まみれになった茜を見て、茜を呼んでいた。
そんな姿は、僕は初めて見る。いつもクールで淡々とこなすのが暁だと思っていた。だけど、感情は胸の中に潜んでいたんだ。