「…あの」
「はい」
「さっき話していた事、どこで聞きました?」
「さっきのって」
「今日誰かが死ぬっていうことが噂になっているってこと」
「あー、それ。誰だっけ」
男子生徒はもう一人の男子生徒に聞いていた。
「…えーと、確か。ほら、顔はいいのに、何か闇がありそうな…えーと」
男子生徒はうーんと首を傾げていた。
「あっ、あいつだよ。芹沢暁」
もう一人の男子生徒は、右手の人差し指をさして、誰かを指していた。
それは、男子生徒二人組の真正面に廊下を通っていた芹沢暁がいた。
「じゃあ、僕たちはこれで」
男子生徒二人組は、芹沢を見た途端、逃げるように去っていた。
まさか、芹沢が。なんで、こんなことを。
本当に芹沢本人が言ったっていうの。
芹沢は私に気づき、スタスタと戸惑いなく私の方に近づいてくる。
「……あんたが聞いたこと本当だよ」
芹沢は私の目の前に来て、真顔で私に言ってくる。
「……芹沢は、何者なの?」
私は芹沢本人と対峙して、芹沢の目を見た。
彼は、ただ私の目をまっすぐに見ているだけで、何を考えているのか分からない。
「…何者でもないよ。俺は至って普通の高校生」