仕事場で寝る場所じゃないんだけどな。

「天沢先生! 起きて下さい。もう昼休みですよ」

そう大きい声で若い女性教師は、天沢先生に言う。

天沢先生は、ビクッと身体を揺らしてむくっと起きた。

「……なんです。急に大きい声、出して」

天沢先生は目をこすりながら、若い女性教師に小さい声で言った。

「なんです、じゃないですよ! もうしっかりして下さい」

若い女性教師はそう言ってから、自分のデスクに戻っていた。

天沢先生はフーとため息をつき、僕達を見据えた。

「で? 何の用かな。海里くん、芹沢暁くん」

天沢先生は迷うなく、僕達の名前を口にした。

「僕達の名前、知ってるの?」

僕は天沢先生に目を丸くして見る。

「もちろん。授業で教えている生徒達のことは、すべて把握してるよ。だから、君達が来たのは水沢茜のことだよね」

「な、なんで」

「さっきの話、聞いてたでしょ?」

天沢先生は、僕達のことはお見通しだった。何もかも。

「聞いていましたよ。だけど、腑に落ちないことがあります。なんで、茜のことを気にかけてくれるんですか」

暁は、僕の横で天沢先生に真っ直ぐに言葉を紡いだ。

「…それは、俺も同じことがあったから。見逃せなくなったんだ。ただそれだけだよ」

天沢先生は僕達を見てから、少し俯きながら声を発した。

「天沢先生の言葉には、まだ信用できませんが、信じます。天沢先生は生徒に嘘をつかないことは知っています。天沢先生を見れば分かります」

「芹沢ー!」

「抱きつかないで下さい。今から、茜の所へ行くんですよね。俺達ももちろん連れて行って下さいよ」