私のいとこの名前を聞いた瞬間、海里くんは止まっていた。

「どうしたの?」

私は下に俯く海里くんを下から覗く。

背中を起こして、海里くんは言う。

「あのさ、ミディアムで黒髪だった?」

海里くんは驚きながらも、私に返答を待っていた。

「…あ、そうだね。黒髪だったよ」

私がそう言うと、大きい黒目がはっきり見えるように開いていた。
私は海里くんの態度が気になった。

なんで私に歳が近い人を聞いてきたのか。

また、なんで亡くなった茜のことでこんなに驚くのか。

「なんで、そんなこと私に聞くの? 海里くんと何か関係あるの」

私は首を傾げて、海里くんに聞いた。

海里くんは戸惑いながらも、私に言ってきた。

「…水沢茜は僕たちの幼馴染でもあり、親友なんだ」

「え? 僕達ということは、芹沢も」

「そう。茜は、東京にいたんだよ。ここは、宮城県だけど」

「僕たちは、元々東京出身なんだ」

海里くんは、私に続けて言った。

「…そう、なんだ。まさか茜に幼馴染がいるとは。そんな話聞いたことなかったから、正直驚いてるよ。そっか」

私は本当に驚いている。あの茜と海里くん達が関わっていたなんて。一回も聞いたことなかった。

茜は、至って普通の中学生だったんだ。

明るくて、顔も可愛いくて、いつも笑顔だった。 
周りから信頼もされていただろう。

親戚で集まる度、みんな茜の話で盛り上がっていたから。

「…暁と僕は小さい頃から一緒だったんだ。でもある時から茜は変わったんだ。僕達は気づかなかったんだ、茜の苦しみを。うーん、今から話すと長いから、暁にちょっと行って、上がらせてもらおう。今話さないとダメなきがするから」

海里くんは言って、芹沢と交渉してきた。

その様子を見ていた私は、芹沢の顔がすごい険悪そうにして、舌打ちをしていた。

海里くんはタッタッと走り、私の元へ来た。