身長が高く、モデル並みに綺麗な女の人が海里くんに話しながら、私を見てきた。

この人、何者?

「はい。初めまして。工藤和歌と申します」

私は笑顔を取り繕って、目の前にいる女の人に挨拶した。
女の人は、あらあらと言いながら、私に挨拶してきた。

「私は海里の母の徹子(てつこ)です。よろしくね」

母親ー! 
いや、若すぎない。
顔を見ても、皺は少ししかなく、スベスベな肌に目を奪われる。

「そういうことだから、芹沢くん。よろしくね」

海里くんの母親はヒラヒラと手を振って、どこかへ出かけた。海里くんは母親の後ろ姿を見てから、芹沢に向きを変える。

「だから、和歌さんは今日から新しいバイトさんなので、暁が和歌さんに教えて。それじゃあ、僕はこれで。何があったら、呼んでね」

海里くんはさっさと軽い説明をしてから、早々と上にある部屋に入っていた。
私と芹沢がポツンと残された。

芹沢は、はあーと溜息をつきながら、私の方を向いた。

「……はあ。こうなったからにはやるしかない。おい、まずはこれ着ろ」

芹沢はキッチンに置いてあった黒エプロンをとって、私の所へ来た。

「……はい」 

私は何も反論できず、ただ返事をした。
芹沢から受け取ったすぐ黒エプロンを着て、芹沢に言う。

「あのさ、着たんだけど」

「ああ、じゃあ、これやっておいて」

芹沢は海喫茶店のメニュー表を渡してきた。

「これって」