そこには、黒エプロンを着ている芹沢がキッチンで何かを作っていた。
「海里。お客さんいるんだぞ。静かに入ってきてくれよ」
芹沢は手を洗ってから、黒エプロンで手を拭いて、海里くんの所へ行った。
店内は満席とまではいかないが、三人ほどお客はきていた。
「はいはい。それと、今日から新しいバイトさん来たから」
ゴメン、ゴメンと言いながら海里くんは、頭をかいていた。
海里くんは身長が高いので、後ろにいた私は存在すら芹沢は気づいていない。
そう芹沢に言ったので、恐る恐る前に出た。
すると、芹沢は目を大きくさせて、私を見て声を発した。
「……っ、はあ? なんでお前がここにいるの」
芹沢は私に向かい、低い声で私に言い放つ。
「だから、言ったでしょ。新しいバイトさん」
それを見た海里くんは、芹沢の態度を気にせず返答をする。
「…バイトは俺でなんとかなっている。だから、新しいバイトはいらないって海里の母さんに言われただろ」
「うん、知ってる。でも、母さんには了承済みだよ」
笑顔で海里くんは、芹沢に言う。
私からすれば、さっき程バイトしないかって言われて、いつの間に母親に連絡していたのだろうか。不思議でならない。
その時、バンっと扉が開く音がして聞こえた。
「…海里の言う通りよ」
女の人がキッチンの中にあったドアから出てきた。
「母さん。家にいたの」
「いるわよ。今日休みだもの。あら、女の子? もしかして、新しくバイトで入る子?」