「ねぇ、和歌さんは部活とか入ってるの?」
何を質問してくるのかと思いきや、私が通っている学校について聞いてきた。
「私は何も入ってないよ。家のこととか色々あってね」
家のこととか、色々あってと言ったけど、家事を少しやるだけで後は、勉強している。
「…へぇ。和歌さんはてっきりバレー部とかに入ってそうな、活発な印象だったから。和歌さんなら、何か入っていると思ってた」
海里くんの言葉に私は驚いた。私の印象がこんなに明るいイメージだとは。
「そうなんだ。海里くんは海喫茶店でいつも手伝ってるの?」
「…だね。手伝ってるよ。でも、僕学校も行ってないし、やることは決まっているんだけど、学校に行くよりは、楽しいよ」
私達の話をかき消すくらいに、車や大型バスがビューンと通り過ぎていった。
車が過ぎた後、私達の前には風が吹いてきた。風があったからか、海里くんは切なそうにしながら、どこかを見つめていた。
「海里くん?」
「……あ、すいません。あ、ちょうどバス来ましたね。乗りましょう」
海里くんは何かを思い出すように目を細めて、いつもの笑顔でバスに乗り込んだ。
私と海里くんは別々の席に座った。海里くんが私を呼び止めて、海喫茶店が近くにある停留所で降りた。
「ここから真っ直ぐに歩いたら、すぐ見えてくるよ」
前は家から近かったから歩いて来れたけど、少しだけ遠くなると、なんだか知らない世界に入ったみたいだ。
「…あ、ほら着いた」
海里くんは私の前を通りながら、海喫茶店のドアを開けて明るい声で誰とでもなく、声をかけていた。