夏の記憶の彼方


「…嘘つくと思う。今の状況で」

確かにこの状況で嘘をつけるほどの問題ではない。

「……つまり、私は死のうとしていたと思ってるの」

「うん、それしか考えられないし」  
                     芹沢は、頭脳がピカイチだけど、あとは何を考えているのかが分からないと生徒達で話を聞いたことがある。

そう、芹沢は。

「…あのさ」

私が考え事をしていたら、芹沢は私に問いかけてくる。

真正面に芹沢はまっすぐに立って、風が吹いてきても私の方を、目をそらさず見ている。

「…あんたは、俺をどう見える?」

え? なにどういうこと。なんで、そういうこと聞くの。

「…なんで、そんなこと聞くの」

 芹沢は少し俯きながら、頭を右手で押さえていた。

「…別に。特に何もない。だけど、あんたはまだ死ねないよ。俺は分かるから。いつあんたが死ぬ日が」

そう私に言ってから、屋上のドアを開けて、じゃあと手を挙げて去っていた。

なに、なにどういうこと。

私の死ぬ日が分かるって言ってなかった。

いやいや、そんなの分かるわけない。
これは脅しだ。そうに、決まっている。

なのに、私は何か納得していた。
根拠も何もないけど、芹沢は何かを抱えていることは確信した。

それから、芹沢から私に話しかけてくることはなかった。

至って、教室では一人で読書を読んで、一人で行動している芹沢。

私は武蔵と琴葉で一緒に行動して、楽しく過ごしている。

だけど、一番仲のいい二人にはこの事情は言えていない。

言える訳がない。

この問題は私の問題だから。

「何してんの、和歌」

琴葉が私に話しかけていたことを知らずに、ぼっーとしていた。