天沢さんについては、おばあちゃんから話は聞いていた。

あっという間に、おばあちゃん家に滞在最終日になっていた。

「じゃあ、おばあちゃん。行くね」

「気をつけてね。また、いつでもいらっしゃいね」

おばあちゃんは、手を振って見送ってくれた。おばあちゃん家で三日間いて分かったのは、誰かといることがこんなに幸せだとは分かったことだ。

自分の家に戻ることは、逆に不安にさせられる。

これが、当たり前じゃないってことに。

おばあちゃん家から、約二五分。

バスを使い、自分の家に帰ってきた。

「…た、だいま」

私は鍵を使い、玄関のドアを開けた。


ガチャ
シーンと静まり返った家。

母も父も、仕事でいない。

分かってる。私なんて必要ではないことなんて。

だけど、なんでおばあちゃんとお母さんはこんなにも違うんだろうか。

私はお母さんが羨ましい。私にはお母さんから愛情を注がれたことがない。

あんな愛情に注がれて、育ったことに。

私は玄関でしゃがみ込んで、顔を両手に覆い、一人で泣いていた。