天沢さんはコーヒーの袋をコップに入れて、お湯を注いでいた。

数分後

「はい。おまたせ!」

「…っ、ありがとうございます」

私は両手でコップを持ち、一口飲む。

「おいしいです。ありがとうございます」

「そう、よかった。んで、さっきの話しようか」

天沢さんはカタッとテーブルに置き、椅子を引いて私の目の前に座って私の目を見据えていた。

「…和歌ちゃんは、何で悩んでるの?」

「……天沢さんは、何か悩んだりしたらどうするんですか?」

「俺は、和歌ちゃんに聞いたんだけどな。うーん、まあいいや。俺は、まず忘れるかな。友達とか先輩とかに聞いてもらって、寝て忘れるかな」

「……私は一度それやって、出来ませんでした。その時はどうしたらいいんですか?」

「…っ、俺は和歌ちゃんの悩んでいることは、武野おばあちゃんからは聞いた。だけど、俺は和歌ちゃんからの言葉が欲しいんだよ」

天野さんは優しい声で私にそう言った。

少し意地悪だけど、人の心を思いやっている優しい心の持ち主だ。
男性にここまで話を聞いてくれる人はいなかった。

同学年の男子は、友達でいるけど、みんなそれどころではない。

自分のことで手一杯だ。

こんな人、中々いない。

「…武野おばあちゃんから聞いたことは本当です。だけど、少し違います。私はワタシらしくいることが出来ないんです」

私は天沢さんを見て、小さい声で発した。

天野さんには嘘はついていないけど、半分は嘘だ。