私は周りを見渡したが、誰もいなかった。
家に戻ろうと立ち上がろうとした瞬間、誰かが来た。
「和歌ちゃん!」
走ってきたのか顔全体、汗ばみれになっていた。
「天沢さん」
その声の主は、天沢さんだった。
「大丈夫かい? 声かけても、全然起きないから心配したよ。一旦家に帰って色々着るものとか必要なものを持ってきたんだけど。あれ?」
私はその人の言葉が嬉しかった。
誰かが心配してくれるんだって。
「…っ、ありがとうございます。ご迷惑おかけしました」
私は天沢さんに立ち上げり、深々と礼をした。
「…いや、大丈夫だよ。和歌ちゃん。武野おばあちゃんから話は聞いた。話したい時話して。俺、なんでも聞くから。じゃあ、行こう。武野おばあちゃん、心配してるよ」
私は天沢さんには、感謝しきれない。
まだ会って間もないのに。
天沢さんは、おばあちゃん家まで付いてきてくれた。
おばあちゃんは、私を心配してくれたのか、私を見た瞬間、抱きしめて泣いていた。
その時にはもう一六時を過ぎていた。今日はずっと天沢さんといた気がする。
この人は、会ったばかりなのに、なぜか力が漲るパワーをくれる。長かった一日目はあっという間に終わってしまった。
この日、天沢さんと関わりを持つことで、彼達までもが変わっていたなんてその時は知らなかった。