「ああ、少し風にあたっていただけだよ」
男は、ポケットに手を入れながら、空を見つめていた。
その姿は、何かを失ったように悲しげな表情をしながら、空を見上げて誰かを想っているようにも見えた。
「……はあ」
「あんたは、ここの人じゃないよな」
「はい」
「ここに何しに来たんだ?」
男は着崩したシャツを直して、側にあった木によりかかり私に聞いてきた。
「おばあちゃん家が近くにあって、時間が空いたからブラブラ散歩していました。そしたら、近くに神社があるから寄ってみただけです」
男は私を見下すように見てから、男は黙っていた。
「…あのさ、一つ聞いていい?」
初対面なのに、何故かこの人には素直に言ってしまう。
「なんですか?」
私はベンチの端っこに座り、男を見上げる。
「武野ばあちゃんの孫か?」
武野というのは、おばあちゃんの苗字だ。おばあちゃんのこと、知っているの、この男は。
私は頷いた。
「そっか。なら良かったわ。じゃあ、俺行くから」
男は私に質問をしてから何かを納得したように勝手に帰ってしまった。
「…なんなの、あの人は」
私はこの男とは縁も切れないほど、親しくなることをまだ私は知らない。
私は名の知らない男を呆然と見つめて、私はおばあちゃん家に帰った。