「和歌」

私は母親に呼び出されて、自分の部屋から出て、リビングに向かう。

「どうしたの」

「…和歌。明日、ここに行ってもらっていい」

 珍しく母親から話しかけてくると思ったら、母が一番めんどくさいと口にしている母の実家に帰るという任務を私に預けてきた。

「私じゃなくて、母さんが行けばいいでしょ」

私は聞こえるか分からない小さい声で母に言った。

「…こんくらいしかあんたは出来ないんだから。私のお願いくらい聞いてもいいんじゃないの」

母はいつも私にお願いする時は、この口癖で私に頼む。

ただ単に母の実家に行っても母が苦しい思いをするだけだから。

それは何故かって。

母親は親とほとんど縁を切っている。

だけど、去年あたりから突然電話がきた。

「あなたがこのまま変わらないのは分かってる。でも、顔くらい見せてもいいじゃない」

 母の実母はそう言っていたが、母が何かが気に入らなくて、実母と疎遠になっていた。

なんで、疎遠になった理由までは分からないが、実母とは相性がよくないらしい。

「分かったよ」

 私は母から目をそらして、返事をした。

こんなことなら、バイトすべきだったなぁ。

私は母と会話をした後に、自分の部屋へ戻った。
いつも私は母に何にも言い返せない。

そんな自分にムカつくけど、何も変えられない。