なんだかんだ言って、芹沢は優しい一面を持っているんだよな。
だけど、何かを抱えているように見えるんだ、芹沢は。
「…和歌さんは何してたの。街中で、一人で歩いて」
何をしていたかって、言える訳がない。
友達のストーカー犯を捕まえるために警察署まで行き、犯人を無事捕まえたことを隠すことなく話す必要はあるのか。
「…えーと、ちょっと用があって」
「ふーん。そうなんだ。じゃあ、うちのおすすめのレモネードを出してもらおうよ。ねぇ、暁」
海里君は、ただ私の話を聞いて頷いてくれるだけで深くまで話は聞こうとしないでくれた。
普通、思春期男子高校生は、聞いてほしくない質問を繰り返ししてくる。
人によるけど。
この二人は何かが違う。
海里君だけじゃない、芹沢もその一人だ。
なんと不思議な男の子がいたもんだ。
「……海里が言うなら、分かった。やってやるよ。大人しく待ってろよ」
芹沢は海里君の言うことは素直に聞く。
学校にいる芹沢とは全く別の顔だった。
「暁、学校はどんな感じなの?」
海里君は、芹沢のことを私に聞いてきた。
「芹沢は学校では異質な感じ。人とは全く違うものを持っている感じがするかな」
「…そうなんだ。僕ははっきり言って、驚いているよ。暁にこんな信頼できる人がいるなんて」
「いや、信頼はされてないよ。ただ、何かが芹沢と同じ感じがするから。それだけだと思う」