最高気温二九度、全国的に暑くなるでしょう。出かける際は、日傘や帽子をかぶると、いいでしょう。今日も一日頑張りましょう。

　朝起きたら、テレビから流れていた。

　美人のお天気キャスターの声が頭の芯から聞こえてくる。

「和歌。今起きたの。早く、支度しなさい」

　今日は今まで以上に暑いせいか、母は苛立ちながら私に言ってくる。
私は黙って、用意されている食事を口に運ぶ。テレビから流れる音ともに静けさな朝だ。

だけど、何かが物足りない。

「…行ってきます」

家族は確かに家にいるのに、お葬式前の静かさが私の体中から叫びたくなった。

私は小声で誰ともなく言ってから、学校に向かう。
私の家から、徒歩約五分。

都立空学校は芸能人も通っているという知名度があり、学力も運動もトップ。

一般人にとっては、願ってもない芸能人がいる学校に通いたいという生徒が続出して、最初の一般応募で、定員オーバーになる程人気な学校だ。

そんな私が通っている学校は、今日で最終日。

明日から夏休みが始まる。

ミーン、ミーン、ミーンと蝉が優雅に鳴いていた。私の横を通り過ぎる同じ学校の生徒達。

楽しい声や笑い声が男女問わず、聞こえてくる。その声が私にとって、苦しい。

「…和歌、和歌！」

誰かに呼ばれたと思い、後ろを振り向いた。

すると、琴葉（ことは）。私の良き親友で、とても信頼できる友達。

「…琴葉」

「なんか、いつもの和歌っぱくなかったけど。大丈夫？」

琴葉は、相手の気持ちを汲み取るのがうまい。

私が大丈夫じゃないってことくらい、すぐに分かってしまう。余計に心配かけたくない。

「何言ってるの。いつもと変わらないよ。いつもの和歌様です」