花火大会は、あっという間に終わってしまった。田舎の花火大会など、そんなものであるのだが。
「楽しかった。それじゃあ、そろそろ帰りましょうか」
「おう、そうだな」
「私、駅の方だから。それじゃあ、また今度遊びに行くね」
フーカが手を振って、公園の出口に向かった。行ってしまう。フーカが、帰ってしまう。
「……フーカ!」
思わず呼び止めてしまった。
「え?」
フーカは、立ち止まって振り返る。
多分、今を逃したら、一生言えない。伊都はそんな気がした。
言うんだ、今度こそ。
大切な人に、思いを伝えるんだ。
「好きだ」
「…………え?」
「お前が好きだ、フーカ」
伊都は、しっかりとフーカの目を見つめて言った。
「…………」
フーカは、呆然としていた。
二人の間に、しばらくの沈黙が流れた。
今すぐこの場から逃げ出したかった。だが、それは出来ない。もう言ってしまったのだ。後戻りすることは不可能だ。
伊都は、下を向いて、目を瞑った。頼む、何か言ってくれ。
「………っ」
すると、フーカの嗚咽が聞こえた。見ると、彼女は肩を揺らして泣いていた。
「えっ、な、何で泣くんだよ」
伊都は慌てた。告白して泣かれるというパターンは、想像していなかったのだ。
「わから、ない……。なんか、勝手に……止まら、なくて……っ」
フーカ自身も、涙の理由が分からないようである。
「でも、悲しいんじゃ、なくて……嬉しいの」
「え……?」
彼女は必死に涙を拭き、伊都の目を見た。
「私も……私も、好き。イトが、好き……!」
「!!」
「ずっと、言いたかった。でも、言えなかった……。急に家に押し掛けて、無理矢理住まわせてもらって、かと思ったら一方的に出ていったりして……そんな、ひどいことをしておいて、好き、なんて言う資格ないって思ったから……」
矢継ぎ早にフーカは話す。気にするな、と伊都は何度も言ってきたはずだったが、やはりフーカは気にしていたのだ。
「でも、まさか、イトの方から言ってくれるなんて思ってなくて……。ありがとう、イト。すごく、すごく嬉しい」
フーカは幸せそうに笑った。
やはり、大人になっても、フーカはフーカだ。煌めくようなその笑顔は、変わらない。
伊都はフーカに近づき、彼女をそっと抱きしめた。