数日後。
舞子の携帯に一通のメールが届いた。今は朝の七時である。こんな時間に一体誰だろうか。
「!」
なんと、唯斗からであった。ドキドキしながらメールを開く。
『元気か。私はもうすぐ退院出来そうだ』
メールはそこで途切れていた。そうか、退院するのか、と安心したのと同時に、
「なんで、わざわざ私に……」
とも思った。とりあえず、「おめでとう」と送っておく。
舞子は、結局、見舞いには行っていなかった。どうせ、今後関わることはないのだし、彼は自分のことなど気にもとめていないのだろう。見舞いになど、行く必要がない。そう思っていた矢先に来たメールだったので、不思議に思ったのだ。
相変わらず、すぐに返事がきた。
『私は、退院した後、やりたいことがある。そこで、お前に頼みたいのだが、私に協力してくれないか?』
「……え?」
一瞬思考が停止した。
『やりたいことって?』
『お前が協力してくれるというなら、教える』
「何よそれ……」
そんなことを言われてしまったら、気になる。舞子は考えた。縁が切れると思っていた唯斗からの誘い。それは純粋に嬉しい。
でも、同時に、彼は自分を協力関係者としか見ていないのだ。信頼を置いてくれているのは嬉しいが、何だか少し寂しい気持ちにもなった。
「……………」
舞子は携帯を握りしめた。
この期に及んで、何を言っているのだ自分は。私情を持ち込んでもしょうがない。強く生きると数日前に決めたばかりではないか。舞子は、返事を打った。
『いいわよ、協力する。それで、何をするの?』
これでいい。
 舞子は清々しい気持ちになった。朝からいい気分である。通知音が鳴り、メールが届く。開いた瞬間、彼女は思わず文面を凝視した。

『立花久美子を、本当の意味で自由にする』