いつの間にか朝になっていた。意外とぐっすり寝られていたらしい。
今日は、夏休み最終日。今日で、フーカのことをどうにかしなければいけない。
フーカは、よく眠れただろうか。
伊都は、横を向いた。
フーカは、
「………!?」
フーカは、いなかった。
ベッドから落ちたのかと思い、探したが、いない。クローゼットも開けてみたが、やはりいない。
ふと、勉強机の上を見た。そこには見慣れない封筒が置いてあった。
伊都はそれを手に取り、中の便箋を出した。そこには、小さな文字で、文章が書かれていた。
『イトへ。
突然出ていったりしてごめんなさい。
あなたと過ごした日々は、本当に楽しかった。今までにないくらい。このままずっと一緒にいたかった。
でも、やっぱり、この家に私が居ることがバレた以上、ここには居られない。私が居ることで、迷惑がかかるって、わかってるから。
それでも守るって、イトは言ってくれた。すごく嬉しかった。でもね、私はやっぱり、私のせいで大切な人たちが傷つけられるのは嫌なの。
私は、イトとお母さんに幸せになって欲しいから、一人になります。
イトもお母さんも、私にいっぱい愛情を注いでくれたから、もう一人でも大丈夫。寂しくなんかありません。
最後に。
私を助けてくれてありがとう。色々な所に連れて行ってくれてありがとう。受け入れてくれてありがとう。
フーカって名前をくれてありがとう。
私が立花久美子だって分かっても、フーカって呼んでくれて、ありがとう。
ここには書ききれないけれど、私はたくさん感謝しています。
ありがとう。さようなら。フーカより』
全てを読み終えた時、伊都の手は震えていた。
「………あのバカ!!」
伊都は手紙を握りしめ、部屋を出て、階段を駆け下りた。トイレ、風呂場、物置、リビング。全ての部屋を見て回ったが、彼女はどこにもいなかった。
「ちょっと、どうしたのよ。朝からそんなにバタバタして……」
キッチンで料理をしながら、母が言った。
「母さん……。フーカが……」
「フーカちゃんが、どうかしたの?」
「……いなくなった」
「………え?」
母は、料理をする手を止めて、完全にこちらを向いた。
「どういう、こと?」
「いなくなったんだよ、フーカが」
「フーカちゃんが……なんで……」
伊都は、母に手紙を差し出した。
「フーカちゃん……」
母は、ただひたすらに彼女の名前を呼ぶだけであった。
伊都は、いてもたってもいられなくなり、部屋に戻って着替えをし、玄関に向かった。
「ちょっと、伊都! どこにいくの!?」
「探してくるんだよ! 今なら、今ならまだ近くにいるかもしれないだろ!」
「そんなの無茶よ!」
「でも!」
「……伊都。フーカちゃんなら、きっと、一人でも大丈夫よ。あの子は、すごく強い子だと思うの。もう私たちの力を借りなくても、生きていけるわ」
母は、伊都をなだめた。だが、伊都はどうしても納得出来なかった。
例え強くても、今の世の中は、彼女が一人で生きていかれる状況ではない。
「………あいつは、もう充分一人でいたんだ。これ以上、一人になる必要なんてないんだよ」
伊都は、外に出た。快晴だった。太陽が照りつけている。おかげで朝だというのに、暑い。さすがは夏である。田舎であろうが関係ない。
伊都は走った。彼女を見つけたい一心で走り続けた。デパート、遊園地。隣の町の思い出の場所にも、電車に乗って行った。もちろん、今まで行ったことのない場所も行った。
方向音痴故、家に帰ることが困難になるかもしれなかったが、そんなことは頭になかった。フーカさえ見つけられたら、それで良かった。
今日は、夏休み最終日。今日で、フーカのことをどうにかしなければいけない。
フーカは、よく眠れただろうか。
伊都は、横を向いた。
フーカは、
「………!?」
フーカは、いなかった。
ベッドから落ちたのかと思い、探したが、いない。クローゼットも開けてみたが、やはりいない。
ふと、勉強机の上を見た。そこには見慣れない封筒が置いてあった。
伊都はそれを手に取り、中の便箋を出した。そこには、小さな文字で、文章が書かれていた。
『イトへ。
突然出ていったりしてごめんなさい。
あなたと過ごした日々は、本当に楽しかった。今までにないくらい。このままずっと一緒にいたかった。
でも、やっぱり、この家に私が居ることがバレた以上、ここには居られない。私が居ることで、迷惑がかかるって、わかってるから。
それでも守るって、イトは言ってくれた。すごく嬉しかった。でもね、私はやっぱり、私のせいで大切な人たちが傷つけられるのは嫌なの。
私は、イトとお母さんに幸せになって欲しいから、一人になります。
イトもお母さんも、私にいっぱい愛情を注いでくれたから、もう一人でも大丈夫。寂しくなんかありません。
最後に。
私を助けてくれてありがとう。色々な所に連れて行ってくれてありがとう。受け入れてくれてありがとう。
フーカって名前をくれてありがとう。
私が立花久美子だって分かっても、フーカって呼んでくれて、ありがとう。
ここには書ききれないけれど、私はたくさん感謝しています。
ありがとう。さようなら。フーカより』
全てを読み終えた時、伊都の手は震えていた。
「………あのバカ!!」
伊都は手紙を握りしめ、部屋を出て、階段を駆け下りた。トイレ、風呂場、物置、リビング。全ての部屋を見て回ったが、彼女はどこにもいなかった。
「ちょっと、どうしたのよ。朝からそんなにバタバタして……」
キッチンで料理をしながら、母が言った。
「母さん……。フーカが……」
「フーカちゃんが、どうかしたの?」
「……いなくなった」
「………え?」
母は、料理をする手を止めて、完全にこちらを向いた。
「どういう、こと?」
「いなくなったんだよ、フーカが」
「フーカちゃんが……なんで……」
伊都は、母に手紙を差し出した。
「フーカちゃん……」
母は、ただひたすらに彼女の名前を呼ぶだけであった。
伊都は、いてもたってもいられなくなり、部屋に戻って着替えをし、玄関に向かった。
「ちょっと、伊都! どこにいくの!?」
「探してくるんだよ! 今なら、今ならまだ近くにいるかもしれないだろ!」
「そんなの無茶よ!」
「でも!」
「……伊都。フーカちゃんなら、きっと、一人でも大丈夫よ。あの子は、すごく強い子だと思うの。もう私たちの力を借りなくても、生きていけるわ」
母は、伊都をなだめた。だが、伊都はどうしても納得出来なかった。
例え強くても、今の世の中は、彼女が一人で生きていかれる状況ではない。
「………あいつは、もう充分一人でいたんだ。これ以上、一人になる必要なんてないんだよ」
伊都は、外に出た。快晴だった。太陽が照りつけている。おかげで朝だというのに、暑い。さすがは夏である。田舎であろうが関係ない。
伊都は走った。彼女を見つけたい一心で走り続けた。デパート、遊園地。隣の町の思い出の場所にも、電車に乗って行った。もちろん、今まで行ったことのない場所も行った。
方向音痴故、家に帰ることが困難になるかもしれなかったが、そんなことは頭になかった。フーカさえ見つけられたら、それで良かった。