フーカの本当の名前は、立花久美子という。彼女はごく普通の家庭に生まれ、平凡な生活を送っていた。
しかし、十二歳の時に異変は起きた。身体が全く成長しないのだ。身長は伸びず、体重も変わらない。流石に変だと思った両親が、久美子を病院に連れていったが、医者に「原因が分からない」と言われ、あちらこちらの病院を回った。最終的には久美子は地元で一番大きな病院に連れていかれた。
そこでの様々な検査の結果、久美子の身体には「不老」という現象が起こっていると判断された。原因はもちろん不明。今のところは治療法はないと医者から告げられた。
信じられなかった。いや、信じたくはなかった。このまま、ずっと、この身体で生活していかなければいけないだなんて、考えただけで気が狂いそうだった。
生活はガラリと変わった。当時、「不老者」は世間にあまり認知されてなかったからか、差別されていた。案の定、久美子が不老者だということは、あっという間に周囲に知れ渡り、立花家は差別の対象となった。久美子は学校で毎日のようにいじめられ、不登校になってしまった。
家族を最も悩ませたのが、近所からの嫌がらせである。いたずら電話、落書きはもちろんのこと、窓ガラスが割られたり、「出てけ!」と連呼されたりと、そんなことは日常茶飯事であった。立花家は何度も引越しを強いられた。
人は、弱者を攻撃することで、安心感や満足感、仲間意識を得るのだと、久美子は幼いながらに悟った。
なぜ、こんな目に遭わなければいけないのだろう。あまりの自分の惨めさに、毎日毎日泣いていた。