翌日。及び講演会当日。伊都は、誠と約束した時間に公園に来た。
「良かった。来てくれて」
誠は安堵の表情を浮かべた。そこまで心配されていたのであろうか。
「いや、さすがに公園は分かるって。問題はそこから先だ」
「ああ、なるほどね。……あれ? そう言えば、フーカちゃんは?」
「ああ、それが行かないってさ」
いつも伊都が行くところへは着いてきていたフーカだったが、講演会の話をした途端、却下された。あれだけ一人は嫌だと連呼していた彼女が「絶対行かない」と言ったのだ。どんな心境の変化なのか、理由を聞いてみたところ、
「今日はゆっくりしていたい気分なの」
これまた良くわからない答えが返ってきたので、伊都はそれ以上聞くのをやめた。
「そっか……」
誠は少し残念そうな顔をする。
「その代わり、朗報だ。兄貴の事なんだけど、会うのオッケーだって」
「え!? 本当?」
「ああ。いつでも大丈夫みたいだ」
「じゃあ、夏休み明けがいいかな。休み中は塾の夏期講習で忙しくて……」
「わかった、じゃあそう言っとく」
「お願いします! もう本当にありがとう、伊都。これで願いが叶うよー」
「いやいや、俺は何も……」
逆に誠のおかげで、数年間連絡を取っていなかった兄と、メッセージをやり取りするきっかけになったのだ。伊都は誠に感謝の気持ちを覚えた。
「じゃあ、会場に行こうか」
「おう」
二人は歩き出した。