駅前の商店街の中にある小さなスィーツ店へ入る。この街では唯一のスィーツ専門店で、高校生達に人気のお店である。今日も店内は学校帰りの高校生達でにぎわっていて、他校の生徒達も多い。
白を基調とした内装で、お洒落な内装も女子達に人気だ。
刀祢達5人は店内に入って6人がけのテーブルに座る。刀祢の前の席に直哉、杏里が座り、刀祢の横に心寧、莉奈の順で座る。
「なぜ、俺の隣は心寧なんだ。別に俺と心寧はワンセットとは違うぞ」
「私も刀祢の隣に座りたくて座っているわけじゃないわよ。失礼なこと言わないで」
「あらあら、心寧の代わりに私が刀祢くんの隣に座ってもいいのよ」
「いや、莉奈に迷惑をかけられない。隣が心寧でも俺が我慢すればいいだけだから、気にするな」
「なぜ、そんな言い方しかできないのよ。我慢しているのは私のほうよ」
心寧が隣で良かった。心寧は幼馴染だし、刀祢の中では女性枠の中に入っていない。心寧とは口喧嘩もできる、良い関係と思っている。
しかし、莉奈はおっとりしていて、大人びて、女性として意識してしまう。そして莉奈が隣にいると色々と気遣ってくれるので緊張してしまう。
自由に放っておいてくれる心寧のほうが安心だ。
直哉が席に着いてしばらくすると皆に提案する。
「杏里だけに全員の分を奢らせるのは悪いから、今日は皆で割り勘にしようぜ。刀祢の分は俺が出すから」
「それは良い提案ね。私も賛成するわ」
莉奈がおっとりと賛成の声をあげる。他の皆は黙って深く頷いた。
「悪いな直哉。俺の分を奢らせてしまって」
「俺が無理を言って刀祢に付いて来てもらったんだ。これぐらいさせろ」
刀祢は両親に反抗しているから、お小遣いももらっていない。昼食代も貰わないので、常に財布の中は常に金欠だ。いつも街中へ出てくるときは、直哉に奢ってもらっている。
ウェイトレスのお姉さんが注文を取りにくる。スィーツの種類など刀祢にはわからない。無難にチーズケーキを頼む。
心寧と莉奈はイチゴのミルフィーユを頼んだ。刀祢はミルフィーユとは何なのか、疑問に思うが、恥ずかしいので、誰にも聞かないでおく。
皆、それぞれに自分が飲みたいドリンクを頼む。
直哉はブルーベリータルトを頼み、杏里はプリンパフェを頼む。
店に入って来てから、杏里は直哉の腕を持って離さないで寄り添っている。直哉は困ったような笑みを浮かべているが、そのまま杏里の好きなようにさせている。
杏里の元にプリンパフェが来る。杏里はスプーンを入れて、プリンの部分をスプーンに乗せて口の中へ入れる。
「んー! 美味しい! 幸せ! 直哉、あーん!」
次にパフェをスプーンですくって直哉の口元へ持っていく。
直哉は皆の顔を見渡して困った顔で苦笑して、杏里からのパフェを食べる。
「おー! これは美味いな!」
「でしょー! これ私の一推しなの!」
思わず、直哉も声を出す。
刀祢はプリンパフェの存在を知らなかった。そんなに美味しいものであれば、自分も頼めば良かったと後悔する。
自分の前のチーズケーキを黙って見つめる。隣を見ると、心寧のイチゴのミルフィーユが美味しそうに輝いて見える。
刀祢はスプーンを持って、心寧が莉奈と話している隙に、イチゴのミルフィーユを半分、スプーンに乗せて食べてみる。
今まで味わったことのない幸せ甘味が口の中に広がる。
「ちょっと、刀祢、何してるのよ! あー私のミルフィーユが半分になってるー!」
「このミルフィーユというケーキは美味いな。心寧が頼んだのもわかる。勝手に食べて悪かった。俺のチーズケーキを半分やるよ」
「刀祢のチーズケーキなんて、いらないわよ。せっかく楽しみにしてた私のミルフィーユが――! 莉奈――!」
「ああ、刀祢くん、あんまり心寧を苛めたらダメじゃない。泣かないで心寧、私のミルフィーユを半分あげるからね」
おかしい。こんな予定ではなかった。ミルフィーユを半分取れば、心寧が怒ってくると思ったのに、半分涙目になっている。これは予想外の事態だ。
刀祢は心寧と口喧嘩がしたかっただけで、泣かすつもりはない。女性を泣かせる趣味もない。これはマズイことになったと刀祢は悩む。
「馬鹿ね、刀祢君、女の子はスイーツは大問題なの。勝手に女の子のスィーツを取ると、女の子はショックで泣いちゃうのよ。刀祢君にはわからないかもしれないけど、女の子にとってスィーツは大事な宝物なの。よく覚えておきなさいね」
莉奈はおっとりとした物腰でやんわりと刀祢に説明する。刀祢は莉奈の言っている意味はわからなかったが、これ以上莉奈を怒らせてはいけない。長い説教が待っている。
「―――心寧、すまなかった! ミルフィーユ美味かった!」
「美味しくて当たり前でしょ。だから頼んだのよ」
「―――すまん」
莉奈が自分のミルフィーユを半分に切り、心寧のケーキ皿の上に乗せる。そして、おっとりとした微笑みを見せて、心寧に食べるように促す。
心寧は涙目を拭いて、フォークでミルフィーユを食べると、顔が恍惚となり、幸せそうにしている。この心寧の表情の変わりように刀祢は驚く。
どうやら心寧には許してもらえたようだ。
(それほど、女子にとってスィーツは重大なものなのか、覚えておこう)
直哉が、そんな刀祢と心寧達とのやり取りを見て微笑んでいる。
「いつも1人がいいって言ってるけど、たまには仲間もいいもんだろう?」
「そうだな!」
確かにいつも1人ではつまらない。常は親友の直哉と一緒にいればいいと思っている。女子達とスィーツを食べに来るなど、初めての経験だ。
心寧を涙目にさせてしまったことは悪かったが、女子達と一緒にいるのも悪くないと思った。
「たまにだからな。本当にたまにだぞ!」
素直に自分の心を言い表せない刀祢だった。
その言葉を聞いて、テーブルにいた全員が声を出して喜んで楽しそうに笑った。
白を基調とした内装で、お洒落な内装も女子達に人気だ。
刀祢達5人は店内に入って6人がけのテーブルに座る。刀祢の前の席に直哉、杏里が座り、刀祢の横に心寧、莉奈の順で座る。
「なぜ、俺の隣は心寧なんだ。別に俺と心寧はワンセットとは違うぞ」
「私も刀祢の隣に座りたくて座っているわけじゃないわよ。失礼なこと言わないで」
「あらあら、心寧の代わりに私が刀祢くんの隣に座ってもいいのよ」
「いや、莉奈に迷惑をかけられない。隣が心寧でも俺が我慢すればいいだけだから、気にするな」
「なぜ、そんな言い方しかできないのよ。我慢しているのは私のほうよ」
心寧が隣で良かった。心寧は幼馴染だし、刀祢の中では女性枠の中に入っていない。心寧とは口喧嘩もできる、良い関係と思っている。
しかし、莉奈はおっとりしていて、大人びて、女性として意識してしまう。そして莉奈が隣にいると色々と気遣ってくれるので緊張してしまう。
自由に放っておいてくれる心寧のほうが安心だ。
直哉が席に着いてしばらくすると皆に提案する。
「杏里だけに全員の分を奢らせるのは悪いから、今日は皆で割り勘にしようぜ。刀祢の分は俺が出すから」
「それは良い提案ね。私も賛成するわ」
莉奈がおっとりと賛成の声をあげる。他の皆は黙って深く頷いた。
「悪いな直哉。俺の分を奢らせてしまって」
「俺が無理を言って刀祢に付いて来てもらったんだ。これぐらいさせろ」
刀祢は両親に反抗しているから、お小遣いももらっていない。昼食代も貰わないので、常に財布の中は常に金欠だ。いつも街中へ出てくるときは、直哉に奢ってもらっている。
ウェイトレスのお姉さんが注文を取りにくる。スィーツの種類など刀祢にはわからない。無難にチーズケーキを頼む。
心寧と莉奈はイチゴのミルフィーユを頼んだ。刀祢はミルフィーユとは何なのか、疑問に思うが、恥ずかしいので、誰にも聞かないでおく。
皆、それぞれに自分が飲みたいドリンクを頼む。
直哉はブルーベリータルトを頼み、杏里はプリンパフェを頼む。
店に入って来てから、杏里は直哉の腕を持って離さないで寄り添っている。直哉は困ったような笑みを浮かべているが、そのまま杏里の好きなようにさせている。
杏里の元にプリンパフェが来る。杏里はスプーンを入れて、プリンの部分をスプーンに乗せて口の中へ入れる。
「んー! 美味しい! 幸せ! 直哉、あーん!」
次にパフェをスプーンですくって直哉の口元へ持っていく。
直哉は皆の顔を見渡して困った顔で苦笑して、杏里からのパフェを食べる。
「おー! これは美味いな!」
「でしょー! これ私の一推しなの!」
思わず、直哉も声を出す。
刀祢はプリンパフェの存在を知らなかった。そんなに美味しいものであれば、自分も頼めば良かったと後悔する。
自分の前のチーズケーキを黙って見つめる。隣を見ると、心寧のイチゴのミルフィーユが美味しそうに輝いて見える。
刀祢はスプーンを持って、心寧が莉奈と話している隙に、イチゴのミルフィーユを半分、スプーンに乗せて食べてみる。
今まで味わったことのない幸せ甘味が口の中に広がる。
「ちょっと、刀祢、何してるのよ! あー私のミルフィーユが半分になってるー!」
「このミルフィーユというケーキは美味いな。心寧が頼んだのもわかる。勝手に食べて悪かった。俺のチーズケーキを半分やるよ」
「刀祢のチーズケーキなんて、いらないわよ。せっかく楽しみにしてた私のミルフィーユが――! 莉奈――!」
「ああ、刀祢くん、あんまり心寧を苛めたらダメじゃない。泣かないで心寧、私のミルフィーユを半分あげるからね」
おかしい。こんな予定ではなかった。ミルフィーユを半分取れば、心寧が怒ってくると思ったのに、半分涙目になっている。これは予想外の事態だ。
刀祢は心寧と口喧嘩がしたかっただけで、泣かすつもりはない。女性を泣かせる趣味もない。これはマズイことになったと刀祢は悩む。
「馬鹿ね、刀祢君、女の子はスイーツは大問題なの。勝手に女の子のスィーツを取ると、女の子はショックで泣いちゃうのよ。刀祢君にはわからないかもしれないけど、女の子にとってスィーツは大事な宝物なの。よく覚えておきなさいね」
莉奈はおっとりとした物腰でやんわりと刀祢に説明する。刀祢は莉奈の言っている意味はわからなかったが、これ以上莉奈を怒らせてはいけない。長い説教が待っている。
「―――心寧、すまなかった! ミルフィーユ美味かった!」
「美味しくて当たり前でしょ。だから頼んだのよ」
「―――すまん」
莉奈が自分のミルフィーユを半分に切り、心寧のケーキ皿の上に乗せる。そして、おっとりとした微笑みを見せて、心寧に食べるように促す。
心寧は涙目を拭いて、フォークでミルフィーユを食べると、顔が恍惚となり、幸せそうにしている。この心寧の表情の変わりように刀祢は驚く。
どうやら心寧には許してもらえたようだ。
(それほど、女子にとってスィーツは重大なものなのか、覚えておこう)
直哉が、そんな刀祢と心寧達とのやり取りを見て微笑んでいる。
「いつも1人がいいって言ってるけど、たまには仲間もいいもんだろう?」
「そうだな!」
確かにいつも1人ではつまらない。常は親友の直哉と一緒にいればいいと思っている。女子達とスィーツを食べに来るなど、初めての経験だ。
心寧を涙目にさせてしまったことは悪かったが、女子達と一緒にいるのも悪くないと思った。
「たまにだからな。本当にたまにだぞ!」
素直に自分の心を言い表せない刀祢だった。
その言葉を聞いて、テーブルにいた全員が声を出して喜んで楽しそうに笑った。