学園祭の次の日は休日である。昨日の夜に心寧から連絡があり、心寧のお母さんが、刀祢と挨拶をしたいと言っていることを聞いた。
刀祢は、ケーキ屋でケーキを買って、心寧のマンションまでロードレーサーに乗って向かう。
心寧のマンションが見えてくる。するとマンションの1階で、手を振っている心寧を見つける。
今から行くと刀祢が連絡をしてから、マンションの1階で待っていたという。
「寒くなかったか?」
「大丈夫。お日様が当たって気持ちよかった」
心寧のご両親は共働きで、いつも帰りは夜が遅く、心寧のお母さんは今日は休みを取って、刀祢を待ってくれているという。
心寧が剣術を習っていると言っても女の子だ。普段から家を留守がちにしている心寧のご両親は、常に心寧のことを心配していたいう。
しかし、剣術道場の息子である刀祢と付き合い始めてから、心寧のご両親は心寧に強力な護衛がついたと思って喜んでいるという。
文化祭には心寧のご両親も来ていて、劇を観覧した。そして刀祢の姿を見て、心寧のお母さんは刀祢のことを恰好いいと見直したらしい。
心寧の家はマンションの5階で、3LDKの家だそうだ。心寧には歳の離れた兄がいるらしいが、既に一人暮らしを始めていて、家からは独立しているという。
5階のフロアーに着いて、心寧が玄関のドアを開けてくれる。そして刀祢は心寧の家の中へ入る。
「ただいま、お母さん、刀祢が来てくれたよ」
「刀祢くん、遊びに来てくれてありがとう。久しぶりね。心寧の母の美紀(ミキ)よ。よろしくね」
リビングに座っていた、心寧のお母さん、新垣美紀(アラガキミキ)さんは、立ち上がると、刀祢の傍まで歩いてきて、深々と頭を下げた。
「お久しぶりです。刀祢です。これ、ケーキです」
刀祢も、心寧のお母さんに頭を下げ、手土産に持ってきたケーキを渡す。
「あら、ありがとう。後から紅茶を淹れて、皆でケーキを食べましょうね」
「お母さん、私と刀祢は部屋へ行くね」
心寧はそういうと、刀祢の手を握って、自分の部屋へと案内する。部屋のドアを開けて、心寧の部屋へ入ると、きれいな女の子の部屋が現れた。
花柄プリントのカーテンと薄ピンク色のベッドカバーが女性らしい。そしてベッドには小さいクッションが幾つも置かれている。
白が基調の家具が並んでいて、大きな机があり、机の上の本棚には大学受験のための参考書が並んでいる。参考書はどれも使い込まれており、心寧が勉強した跡が残っている。
「きれいな部屋だな」
「刀祢が来るから、片付けと掃除をしたの。普段はもっと散らかってるんだけど」
刀祢が部屋を見回していると、心寧は恥ずかしそうに答える。
机の上に大学の参考書を手に取って、パラパラとめくると、心寧のきれいな字が参考書にギッシリと書かれている。
「今から大学受験の勉強か。すごいな。字びっしりと書かれてる」
「字が汚いから、あんまり見ないでね。恥ずかしいから」
「心寧の字はきれいだ。俺の字なんて、自分でも読めないぞ」
そう言って刀祢は笑う。
心寧が今の時期から、こんなに大学受験の勉強をしているとは知らなかった。刀祢は高校3年生になってから、大学受験の準備をすれば良いと思って、のんびりとしていたが、このままではマズイと感じた。
心寧は学校の成績もそれなりに良い。そして、今から大学受験の勉強をしている。このままでは、刀祢は心寧と同じ大学に通うことはできないと悟る。
今日にでも家に帰った時に、両親に話をして進学塾に通う日を早めようと心に決める。
「俺も進学塾に通うよ。心寧と一緒の大学に通いたいからな」
「それなら、私も刀祢と一緒の進学塾に通う。そのほうが楽しいもの」
「そうだな。俺も、心寧と一緒の進学塾に通いたいな」
心寧と同じ進学塾に通えば、一緒に勉強することも可能だ。この街には本格的な進学塾はない。進学塾へ通うには隣町へ電車で行く必要がある。1人で電車通学するよりも、2人で通うほうが楽しい。
「ケーキと紅茶を持ってきたわよ」
タイミング良く、心寧のお母さんがケーキと紅茶を持って、心寧の部屋に現れた。そして、3人で部屋の床に座って、小さなテーブルの上にケーキと紅茶を置く。
「お母さん、今、刀祢と話していたんだけど、大学へ行く進学塾に通いたい。刀祢も同じ進学塾に通ってくれるって言ってる。進学塾へ行ってもいい?」
「進学塾へ行くと夜が遅くなるから心配だったけど、刀祢君が一緒に通ってくれるなら心配いらないわね。私は大賛成よ。受験勉強は早くからしておいたほうが良いわ」
心寧のお母さんは即決で了承してくれた。刀祢の両親も進学塾に通うのは了承してくれるだろう。特に母親は刀祢の成績を見て心配していたから、大賛成のはずである。
それから3人で心寧の部屋でケーキを食べ、紅茶を飲んで、楽しく談笑したが、心寧のお母さんが、刀祢と心寧がどうしして、付き合うことになったのかなどを質問する。
心寧がお母さんに話していないことを、刀祢に聞いて来るので、刀祢も返答に困り、心寧は照れて、恥ずかしがり、顔を赤らめていた。
「お母さん、恥ずかしいから、刀祢と公園へ行ってくる」
「少し、お母さんも質問しすぎたわね。公園へ2人で行ってらっしゃい」
心寧のお母さんは暖かい微笑みを浮かべて刀祢と心寧を送り出してくれた。
「お邪魔しました」
「また、遊びに来てね。今日は楽しかったわ」
刀祢は頭を下げ、心寧のお母さんに挨拶をする。そして心寧と手を繋いで家を出て、マンションの近くにある公園へ向かう。
「もう、お母さんったら、話過ぎだよ。恥ずかしかった」
「楽しいお母さんで安心したよ。また、遊びに来させてもらうよ」
刀祢のお母さんもかなり陽気な方だが、心寧のお母さんも朗らかだ。
公園のベンチに座って2人で寄り添う。もうすぐ冬が近づいている空は空気が澄んでいて、上空の高いところまで空気が透き通っている。
心寧が刀祢の手を持って、指を絡めて恋人繋ぎにして、手をギュッと握る。刀祢も手をギュッと握る。
「ずっとこんな感じだといいな」
「うん」
座っている刀祢の肩に心寧が頭を添える。落ち着いて、和やかな雰囲気が流れる。
刀祢は、ケーキ屋でケーキを買って、心寧のマンションまでロードレーサーに乗って向かう。
心寧のマンションが見えてくる。するとマンションの1階で、手を振っている心寧を見つける。
今から行くと刀祢が連絡をしてから、マンションの1階で待っていたという。
「寒くなかったか?」
「大丈夫。お日様が当たって気持ちよかった」
心寧のご両親は共働きで、いつも帰りは夜が遅く、心寧のお母さんは今日は休みを取って、刀祢を待ってくれているという。
心寧が剣術を習っていると言っても女の子だ。普段から家を留守がちにしている心寧のご両親は、常に心寧のことを心配していたいう。
しかし、剣術道場の息子である刀祢と付き合い始めてから、心寧のご両親は心寧に強力な護衛がついたと思って喜んでいるという。
文化祭には心寧のご両親も来ていて、劇を観覧した。そして刀祢の姿を見て、心寧のお母さんは刀祢のことを恰好いいと見直したらしい。
心寧の家はマンションの5階で、3LDKの家だそうだ。心寧には歳の離れた兄がいるらしいが、既に一人暮らしを始めていて、家からは独立しているという。
5階のフロアーに着いて、心寧が玄関のドアを開けてくれる。そして刀祢は心寧の家の中へ入る。
「ただいま、お母さん、刀祢が来てくれたよ」
「刀祢くん、遊びに来てくれてありがとう。久しぶりね。心寧の母の美紀(ミキ)よ。よろしくね」
リビングに座っていた、心寧のお母さん、新垣美紀(アラガキミキ)さんは、立ち上がると、刀祢の傍まで歩いてきて、深々と頭を下げた。
「お久しぶりです。刀祢です。これ、ケーキです」
刀祢も、心寧のお母さんに頭を下げ、手土産に持ってきたケーキを渡す。
「あら、ありがとう。後から紅茶を淹れて、皆でケーキを食べましょうね」
「お母さん、私と刀祢は部屋へ行くね」
心寧はそういうと、刀祢の手を握って、自分の部屋へと案内する。部屋のドアを開けて、心寧の部屋へ入ると、きれいな女の子の部屋が現れた。
花柄プリントのカーテンと薄ピンク色のベッドカバーが女性らしい。そしてベッドには小さいクッションが幾つも置かれている。
白が基調の家具が並んでいて、大きな机があり、机の上の本棚には大学受験のための参考書が並んでいる。参考書はどれも使い込まれており、心寧が勉強した跡が残っている。
「きれいな部屋だな」
「刀祢が来るから、片付けと掃除をしたの。普段はもっと散らかってるんだけど」
刀祢が部屋を見回していると、心寧は恥ずかしそうに答える。
机の上に大学の参考書を手に取って、パラパラとめくると、心寧のきれいな字が参考書にギッシリと書かれている。
「今から大学受験の勉強か。すごいな。字びっしりと書かれてる」
「字が汚いから、あんまり見ないでね。恥ずかしいから」
「心寧の字はきれいだ。俺の字なんて、自分でも読めないぞ」
そう言って刀祢は笑う。
心寧が今の時期から、こんなに大学受験の勉強をしているとは知らなかった。刀祢は高校3年生になってから、大学受験の準備をすれば良いと思って、のんびりとしていたが、このままではマズイと感じた。
心寧は学校の成績もそれなりに良い。そして、今から大学受験の勉強をしている。このままでは、刀祢は心寧と同じ大学に通うことはできないと悟る。
今日にでも家に帰った時に、両親に話をして進学塾に通う日を早めようと心に決める。
「俺も進学塾に通うよ。心寧と一緒の大学に通いたいからな」
「それなら、私も刀祢と一緒の進学塾に通う。そのほうが楽しいもの」
「そうだな。俺も、心寧と一緒の進学塾に通いたいな」
心寧と同じ進学塾に通えば、一緒に勉強することも可能だ。この街には本格的な進学塾はない。進学塾へ通うには隣町へ電車で行く必要がある。1人で電車通学するよりも、2人で通うほうが楽しい。
「ケーキと紅茶を持ってきたわよ」
タイミング良く、心寧のお母さんがケーキと紅茶を持って、心寧の部屋に現れた。そして、3人で部屋の床に座って、小さなテーブルの上にケーキと紅茶を置く。
「お母さん、今、刀祢と話していたんだけど、大学へ行く進学塾に通いたい。刀祢も同じ進学塾に通ってくれるって言ってる。進学塾へ行ってもいい?」
「進学塾へ行くと夜が遅くなるから心配だったけど、刀祢君が一緒に通ってくれるなら心配いらないわね。私は大賛成よ。受験勉強は早くからしておいたほうが良いわ」
心寧のお母さんは即決で了承してくれた。刀祢の両親も進学塾に通うのは了承してくれるだろう。特に母親は刀祢の成績を見て心配していたから、大賛成のはずである。
それから3人で心寧の部屋でケーキを食べ、紅茶を飲んで、楽しく談笑したが、心寧のお母さんが、刀祢と心寧がどうしして、付き合うことになったのかなどを質問する。
心寧がお母さんに話していないことを、刀祢に聞いて来るので、刀祢も返答に困り、心寧は照れて、恥ずかしがり、顔を赤らめていた。
「お母さん、恥ずかしいから、刀祢と公園へ行ってくる」
「少し、お母さんも質問しすぎたわね。公園へ2人で行ってらっしゃい」
心寧のお母さんは暖かい微笑みを浮かべて刀祢と心寧を送り出してくれた。
「お邪魔しました」
「また、遊びに来てね。今日は楽しかったわ」
刀祢は頭を下げ、心寧のお母さんに挨拶をする。そして心寧と手を繋いで家を出て、マンションの近くにある公園へ向かう。
「もう、お母さんったら、話過ぎだよ。恥ずかしかった」
「楽しいお母さんで安心したよ。また、遊びに来させてもらうよ」
刀祢のお母さんもかなり陽気な方だが、心寧のお母さんも朗らかだ。
公園のベンチに座って2人で寄り添う。もうすぐ冬が近づいている空は空気が澄んでいて、上空の高いところまで空気が透き通っている。
心寧が刀祢の手を持って、指を絡めて恋人繋ぎにして、手をギュッと握る。刀祢も手をギュッと握る。
「ずっとこんな感じだといいな」
「うん」
座っている刀祢の肩に心寧が頭を添える。落ち着いて、和やかな雰囲気が流れる。