次の日の昼休憩になって、西野杏里(ニシノアンリ)が嬉しそうに教室へ戻ってくる。
西野杏里(ニシノアンリ)は心寧の中学からの親友でギャルである。
好奇心旺盛で、悪戯好き、小悪魔的要素が満載な彼女は、常に学校内の情報をキャッチしては、心寧達に教えている。
ネクタイを外して、シャツのボタンを2つ外し、丈の短いミニスカートを履いて、いつも学校内を元気よく駆け巡っている。
「はーい! 心寧ちゃん! 新しい情報を拾ってきたよー!」
「杏里、そんなに大きい声を出さなくても聞こえてるし、もう少し小さな声で話して。何があったの?」
教室内に聞こえるほど、大きな声で杏里が心寧を話かけてくる。
丁度、その時は心寧は莉奈と共にお弁当を広げている最中だった。
天然で、あまり何事も気にしない杏里は、嬉しそうに大声で、今ゲットしてきた情報を心寧と莉奈に話す。
「あのねー。3年生の教室へ行ってきたんだけど。3年生のチャラ男達3人が、駅前で刀祢にボコボコにされたって噂になってるよー!」
「刀祢は顔の表情こそ悪いけど、他人に暴力なんて振るったことないよ。剣術を習っているから暴力は禁止されてるのよ」
「そんなことを言っても3年生のチャラ男先輩達に話を聞いたし」
「話の内容を詳しく聞かせてよ」
それを聞いた心寧は目を細くして刀祢を見る。
刀祢は朝のHRが始まった途端に寝て、昼休憩だというのに昼食も取らずに眠っている。
刀祢はいつも昼食をとらない。食堂に行くお金も両親からもらっていない。弁当も持ってきていない。
昨日、心寧が弁当を差し入れしたら、「しょっぱい!」と言われたので、当分の間は刀祢には弁当の差し入れはしないと心に決めている。
せっかく朝起きして弁当を頑張って作ったのに、出て来た言葉は「しょっぱい!」。
このことは心寧にとっては、忘れることができないショックな一言だ。
「なんだか刀祢、機嫌悪くて、いきなり殴りかかってきたって、3年生のチャラ男先輩達も意味がわからないー? って言ってた」
「杏里、その3年生のチャラ男君先輩達から直接に話を聞いたの?」
おっとりと莉奈が杏里に問う。仕草をおっとりとさせて、相手に話を促す莉奈のいつもの手法だ。
「そうだよー!」
「ねえ、杏里、そのチャラ男先輩君達、今日は元気に学校に来てるの?」
「うん。そういえば元気に昼休憩、3人で遊んでた!」
莉奈と心寧は杏里の話しを聞いておかしいと思う。
「心寧、この話、ちょっとおかしくない? 刀祢くんに乱暴されたのに、学校に来られるかな?」
「刀祢に乱暴されたら、そのチャラ男先輩達は今頃は入院しているはずよ。その話はおかしいわ」
刀祢は剣術家の息子だ。刀祢が本気になれば入院騒ぎになる。昨日ボコボコにされて、今日、元気でいられるはずがない。
また杏里がデマの情報を持ち帰ってきたようだ。杏里は天然で人を疑うことが少ない。それを面白がって、デマを流す男子達も多い。
しかし、1度、クラス内に流れた噂を取り消すことは難しい。大きな杏里の声でデマの情報がクラスの皆の耳に入ってしまった。
クラスの皆は机で寝ている刀祢を見て、口々にヒソヒソ話をしている。
刀祢に関する。暴力行為のデマは多い。しかし1度として本当であったことはない。刀祢は人と喧嘩はしないし、殴ったりしない。
しかし、外見が、常に目付きが悪く、険しい顔をして、ムスッと黙っている。常に不機嫌オーラを放っているので誤解されることが多い。
莉奈、心寧、杏里の3人は席に座って、早々と弁当を食べ、その後に行動に移る。
「3年生のチャラ男先輩から聞いた情報はデマ情報でしが。嘘の情報を流して、ごめんなさい!」
「いつものことだけど、杏里も情報には気をつけようね」
杏里はデマ情報を流したことをクラスの皆に頭を下げて、丁寧にごめんなさいと謝っていく。クラスの皆は杏里が3年生のチャラ男達にデマ情報を掴まされたとわかり、笑いながら許してくれる。
莉奈はおっとりした雰囲気で、今のデマ情報の状況を説明し、刀祢は何もしていないことを1人づつ丁寧に説明していく。
心寧も刀祢は顔が厳めしいが、人を殴るような人ではないと説明し、クラスの皆の誤解を解くように努める。
「今回の件は杏里が騙されて持って帰ってきた情報なの。刀祢くんは何もしていません。だから、刀祢くんを信じてあげてね」
「刀祢は、皆と仲良くしようとしないけど、そんなに悪い人ではないわ。剣術家で暴力は禁止されているの。だから刀祢くんはそんなことはしないわ」
「いつも不機嫌な顔をして、後ろの席に座っているか、寝ているだけの奴だから、何を考えているか、わからないんだよな」
しかし、クラスの皆は、表面上は納得してくれるが、やはり刀祢のことが怖いらしい。心寧は刀祢が孤立しないように、クラスの皆に頭を下げてまわった。
「心寧、何かあったのか?」
「ちょっと、杏里が3年生のチャラ男先輩達から刀祢の悪い情報をもらってきちゃったの」
食堂から帰ってきた斎藤直哉(サイトウナオヤ)が心寧達に声をかけて来る。
斎藤直哉(サイトウナオヤ)は中学からの刀祢の唯一の親友である。
そして、五月丘高校でも1、2を争うイケメンとして全校生徒に知られている。
きれいな眉、茶色の大きな瞳、少し垂れた目尻、涼し気な二重、爽やかな目元、きれいな鼻筋、笑顔が似合う唇、女性のようにきれいな色白な肌。髪は茶髪のゆるふわショートにしている。
そのどれもが五月丘高校の女子高生達の目を惹きつけ、虜にしてしまう。
直哉と遊びでもいいから付き合いたい言う女子も多く、彼女はいないが多くの女子友達がいる。
性格は、素直で大らか。人柄もよく、笑顔を絶やさない。何事も物怖じすることがなく、刀祢とも上手く友達付き合いしている。
直哉から説明しもらえれば、女子生徒を納得させることは容易い。心寧は杏里のデマ情報の話しを伝える。
「また、3年生達の刀祢への嫌がらせか。剣斗先輩が怖かったからって、弟に仕返ししなくてもいいのにな」
「剣斗兄さんは何も悪いことはしていないわ。だから刀祢に八つ当たりするのは筋違いよ」
今年、卒業した京本剣斗(キョウモトケント)、刀祢の兄は、剣道部の部長にして、エース。そして生徒会長も熟す超人だった。
そして誰よりも正義感が強く、厳格な性格で、学校の色々な悪行をさばいたことでも有名な先輩だ。
今の3年生男子達の中には、剣斗先輩がいた時は怖くて、剣斗先輩のことを嫌っていた者達も多い。
その者達は今になって剣斗の弟である刀祢に嫌がらせをしてくることになった。
当人である刀祢は一向に気にした素振りも見せていないが、剣斗兄さんを崇拝している心寧からすると我慢できない。
直哉も手伝ってくれて、クラスの皆の誤解が解けて助かった。
直哉は心寧達を連れて、刀祢の席に向かうと、刀祢の頭を軽く叩く。
刀祢は顔だけあげて直哉を見る。
「狸寝入りもいい加減にしろよ。心寧も莉奈も大変だったんだぞ」
「ああ、わかってる。でも俺に何ができるんだよ。起きて黙っていたら、皆が迷惑するだろう。だから俺は寝ていたほうがいい」
それを聞いた心寧は、刀祢は刀祢なりにクラスの皆を気遣っていることを知って驚いた。
すると刀祢が寝ながら心寧へ向かって声をかける。
「刀祢のこと見直したりしてないからね」
「別に心寧に見直してもらおうと思ってやってる訳じゃないからな」
少しは刀祢のことを見直してあげようと思っていた心寧は、その一言を聞いて考えを撤回した。
刀祢が謝ることではない。杏里が謝ることだ。しかし、皆に頭を下げた自分と莉奈の気持ちをわかってほしいと心寧は思った。
西野杏里(ニシノアンリ)は心寧の中学からの親友でギャルである。
好奇心旺盛で、悪戯好き、小悪魔的要素が満載な彼女は、常に学校内の情報をキャッチしては、心寧達に教えている。
ネクタイを外して、シャツのボタンを2つ外し、丈の短いミニスカートを履いて、いつも学校内を元気よく駆け巡っている。
「はーい! 心寧ちゃん! 新しい情報を拾ってきたよー!」
「杏里、そんなに大きい声を出さなくても聞こえてるし、もう少し小さな声で話して。何があったの?」
教室内に聞こえるほど、大きな声で杏里が心寧を話かけてくる。
丁度、その時は心寧は莉奈と共にお弁当を広げている最中だった。
天然で、あまり何事も気にしない杏里は、嬉しそうに大声で、今ゲットしてきた情報を心寧と莉奈に話す。
「あのねー。3年生の教室へ行ってきたんだけど。3年生のチャラ男達3人が、駅前で刀祢にボコボコにされたって噂になってるよー!」
「刀祢は顔の表情こそ悪いけど、他人に暴力なんて振るったことないよ。剣術を習っているから暴力は禁止されてるのよ」
「そんなことを言っても3年生のチャラ男先輩達に話を聞いたし」
「話の内容を詳しく聞かせてよ」
それを聞いた心寧は目を細くして刀祢を見る。
刀祢は朝のHRが始まった途端に寝て、昼休憩だというのに昼食も取らずに眠っている。
刀祢はいつも昼食をとらない。食堂に行くお金も両親からもらっていない。弁当も持ってきていない。
昨日、心寧が弁当を差し入れしたら、「しょっぱい!」と言われたので、当分の間は刀祢には弁当の差し入れはしないと心に決めている。
せっかく朝起きして弁当を頑張って作ったのに、出て来た言葉は「しょっぱい!」。
このことは心寧にとっては、忘れることができないショックな一言だ。
「なんだか刀祢、機嫌悪くて、いきなり殴りかかってきたって、3年生のチャラ男先輩達も意味がわからないー? って言ってた」
「杏里、その3年生のチャラ男君先輩達から直接に話を聞いたの?」
おっとりと莉奈が杏里に問う。仕草をおっとりとさせて、相手に話を促す莉奈のいつもの手法だ。
「そうだよー!」
「ねえ、杏里、そのチャラ男先輩君達、今日は元気に学校に来てるの?」
「うん。そういえば元気に昼休憩、3人で遊んでた!」
莉奈と心寧は杏里の話しを聞いておかしいと思う。
「心寧、この話、ちょっとおかしくない? 刀祢くんに乱暴されたのに、学校に来られるかな?」
「刀祢に乱暴されたら、そのチャラ男先輩達は今頃は入院しているはずよ。その話はおかしいわ」
刀祢は剣術家の息子だ。刀祢が本気になれば入院騒ぎになる。昨日ボコボコにされて、今日、元気でいられるはずがない。
また杏里がデマの情報を持ち帰ってきたようだ。杏里は天然で人を疑うことが少ない。それを面白がって、デマを流す男子達も多い。
しかし、1度、クラス内に流れた噂を取り消すことは難しい。大きな杏里の声でデマの情報がクラスの皆の耳に入ってしまった。
クラスの皆は机で寝ている刀祢を見て、口々にヒソヒソ話をしている。
刀祢に関する。暴力行為のデマは多い。しかし1度として本当であったことはない。刀祢は人と喧嘩はしないし、殴ったりしない。
しかし、外見が、常に目付きが悪く、険しい顔をして、ムスッと黙っている。常に不機嫌オーラを放っているので誤解されることが多い。
莉奈、心寧、杏里の3人は席に座って、早々と弁当を食べ、その後に行動に移る。
「3年生のチャラ男先輩から聞いた情報はデマ情報でしが。嘘の情報を流して、ごめんなさい!」
「いつものことだけど、杏里も情報には気をつけようね」
杏里はデマ情報を流したことをクラスの皆に頭を下げて、丁寧にごめんなさいと謝っていく。クラスの皆は杏里が3年生のチャラ男達にデマ情報を掴まされたとわかり、笑いながら許してくれる。
莉奈はおっとりした雰囲気で、今のデマ情報の状況を説明し、刀祢は何もしていないことを1人づつ丁寧に説明していく。
心寧も刀祢は顔が厳めしいが、人を殴るような人ではないと説明し、クラスの皆の誤解を解くように努める。
「今回の件は杏里が騙されて持って帰ってきた情報なの。刀祢くんは何もしていません。だから、刀祢くんを信じてあげてね」
「刀祢は、皆と仲良くしようとしないけど、そんなに悪い人ではないわ。剣術家で暴力は禁止されているの。だから刀祢くんはそんなことはしないわ」
「いつも不機嫌な顔をして、後ろの席に座っているか、寝ているだけの奴だから、何を考えているか、わからないんだよな」
しかし、クラスの皆は、表面上は納得してくれるが、やはり刀祢のことが怖いらしい。心寧は刀祢が孤立しないように、クラスの皆に頭を下げてまわった。
「心寧、何かあったのか?」
「ちょっと、杏里が3年生のチャラ男先輩達から刀祢の悪い情報をもらってきちゃったの」
食堂から帰ってきた斎藤直哉(サイトウナオヤ)が心寧達に声をかけて来る。
斎藤直哉(サイトウナオヤ)は中学からの刀祢の唯一の親友である。
そして、五月丘高校でも1、2を争うイケメンとして全校生徒に知られている。
きれいな眉、茶色の大きな瞳、少し垂れた目尻、涼し気な二重、爽やかな目元、きれいな鼻筋、笑顔が似合う唇、女性のようにきれいな色白な肌。髪は茶髪のゆるふわショートにしている。
そのどれもが五月丘高校の女子高生達の目を惹きつけ、虜にしてしまう。
直哉と遊びでもいいから付き合いたい言う女子も多く、彼女はいないが多くの女子友達がいる。
性格は、素直で大らか。人柄もよく、笑顔を絶やさない。何事も物怖じすることがなく、刀祢とも上手く友達付き合いしている。
直哉から説明しもらえれば、女子生徒を納得させることは容易い。心寧は杏里のデマ情報の話しを伝える。
「また、3年生達の刀祢への嫌がらせか。剣斗先輩が怖かったからって、弟に仕返ししなくてもいいのにな」
「剣斗兄さんは何も悪いことはしていないわ。だから刀祢に八つ当たりするのは筋違いよ」
今年、卒業した京本剣斗(キョウモトケント)、刀祢の兄は、剣道部の部長にして、エース。そして生徒会長も熟す超人だった。
そして誰よりも正義感が強く、厳格な性格で、学校の色々な悪行をさばいたことでも有名な先輩だ。
今の3年生男子達の中には、剣斗先輩がいた時は怖くて、剣斗先輩のことを嫌っていた者達も多い。
その者達は今になって剣斗の弟である刀祢に嫌がらせをしてくることになった。
当人である刀祢は一向に気にした素振りも見せていないが、剣斗兄さんを崇拝している心寧からすると我慢できない。
直哉も手伝ってくれて、クラスの皆の誤解が解けて助かった。
直哉は心寧達を連れて、刀祢の席に向かうと、刀祢の頭を軽く叩く。
刀祢は顔だけあげて直哉を見る。
「狸寝入りもいい加減にしろよ。心寧も莉奈も大変だったんだぞ」
「ああ、わかってる。でも俺に何ができるんだよ。起きて黙っていたら、皆が迷惑するだろう。だから俺は寝ていたほうがいい」
それを聞いた心寧は、刀祢は刀祢なりにクラスの皆を気遣っていることを知って驚いた。
すると刀祢が寝ながら心寧へ向かって声をかける。
「刀祢のこと見直したりしてないからね」
「別に心寧に見直してもらおうと思ってやってる訳じゃないからな」
少しは刀祢のことを見直してあげようと思っていた心寧は、その一言を聞いて考えを撤回した。
刀祢が謝ることではない。杏里が謝ることだ。しかし、皆に頭を下げた自分と莉奈の気持ちをわかってほしいと心寧は思った。