直哉に誘われて久しぶりに剣道部へ行く。直哉は武道場へ着くと、更衣室で剣道着に着替えて、すっかり剣道部の仲間入りをしている。
刀祢は剣道よりも風月流剣術のほうが好きである。
剣道は竹刀の先端から約4分の1の部分までを刃部とする。弦は背の部分なので常に竹刀の上になければならない。
有効打突にするには、相手より声をあげて、気迫、気力でも優っており、竹刀で相手を打った時、自分の体制が崩れてはいけない。
有効打突を打ち終わった後も常に警戒して、防御姿勢を取り続ける必要がある。そうしなければ有効打突は取り消しとなってしまうルールである。
風月流の剣術は木刀を使用し、鍔の部分より上部は全て刃とみなす。よって鍔の近くであっても刃なので、木刀全体が刃といってもいい。木刀の刃の部分であれば、どこで相手を打っても有効なのだ。
もちろん、寸止めがルールで決められているので、木刀で相手を打てば危険反則とみなして、負けとなる。
木刀で打つの時に気合の入った声などわざわざ発する必要はない。審判に対して、気迫や気合を見せる必要はない。
剣道と風月流剣術ではこのような違いがあり、刀祢は風月流剣術を選んだ。小学校の頃から剣道も嗜んではいたが、ずいぶんと剣道からは足が遠のいていた。
直哉は風月流剣術よりも、相手に体当たりもでき、相手を叩くことができる剣道のほうが今はお気に入りのようだ。直哉は五十嵐達に混じって、竹刀で入念に素振りをしている。
刀祢は入念に剣の軌道を確認するように竹刀をゆっくり振って、体の微調整を行う。竹刀を振る時、少しでもブレると気持ちが悪い。
段々と竹刀の振る早さを早くしていき、身体と竹刀を一体化させていく。入念に準備運動ができた所で、直哉が刀祢の元へやって来た。
「刀祢、剣道で俺と正式に試合をしようぜ。道場では刀祢に勝てないからな」
直哉は風月流剣術に入門してから1度も刀祢に勝てたことがないが、刀祢よりも長身で体格の良い直哉なら、剣道では分があるかもしれない。
「直哉との勝負を受けてもいいぞ」
「本当か。それなら賭けをしようぜ」
直哉は試合を本気で楽しむつもりらしい。爽やかな顔で笑っている。
「刀祢が勝負に負けたら、もっと剣道部へ参加すること。五十嵐達とも、もっと仲良くなること。俺が負けたら、俺の奢りで焼肉食べ放題だ」
正式な試合形式ということで主審は五十嵐が行い、副審は新浜と南が行うことになった。直哉と刀祢と開始線にしゃがんで竹刀を構える。五十嵐の合図で試合は開始される。
「キィィェエ―――!」
「セリャァア―――!」
お互いに気合の入った気勢を発する。刀祢は中段に構える。お互いに気合の入った気勢を発する。刀祢は中段に構える。直哉は上段に竹刀を構える。
刀祢はすり足で直哉の左側へ回り込むように円を描いていく。直哉は中央に立って、刀祢と真正面を向き合うようにすり足で刀祢を追う。
剣道では打ち込んだ時の姿勢が万全でないと有効打突にならない。よって、刀祢は円を描くように動きながら直哉に万全な体制を取らせないようにしているのである。
「キィィェエ―――!」
直哉は強引に刀祢の真正面に立つと、身体ごとぶつかるように飛びこみ面を決めにくる。
刀祢は直哉が飛び込み面で先手を取ろうとしていることを予測していた。だから円を描くように動いて、直哉の心を焦らす作戦にでた。
やはり直哉は焦って、強引に体制を立て直して、飛び込んできた。今の直哉の胴はがら空きだ。
「セリャァア―――!」
刀祢は飛び込んでくる直哉の左側へ抜けるように足を捌きながら、上半身と腕を回転させて、直哉の胴へ一閃する。
そしてお互いが交差した後に、2人共、身体を回転させて、体制を整えて体ごとぶつかり合う。
その時、主審、副審2人の赤旗が上がる。「胴あり」と宣言が告げられる。そして赤旗を下げて「勝負あり」と五十嵐が大きな声を出す。お互いに開始線まで戻って竹刀を収めて試合を終了。
道場の隅まで歩いて、刀祢も直哉も面を外す。数分の戦いなのに息があがる。
「刀祢はやっぱり強いな。剣道でもやられたか」
「直哉、風月流剣術の基本を忘れてるぞ」
直哉は少し悩むとハッとした顔になり、恥ずかしそうに髪を掻く。
風月流剣術は実戦剣術道場である。そのため木刀でどこを狙ってもいい。剣道のように面を狙う必要はない。一番大きな体の中心を狙うか、足を封鎖するため下段を狙うことが基本となっている。
刀祢にとって2番目に得意なのは胴薙ぎなのだ。そのことを直哉はすっかりと忘れていた。
「俺も、もう少し道場で基本を覚え直したほうがいいな」
直哉は刀祢に向かって爽やかに笑った。
「俺達も焼き肉食べ放題へ一緒に連れて行ってくれよ」
五十嵐達が駆け寄ってきて、直哉に自分達も誘えと言ってくる。
「わかった! 皆で割り勘な!」
焼肉は大勢で食べたほうが楽しいだろうと刀祢は思う。
剣道部が終わった時、男子部員達は集まって、焼肉食べ放題へ行き、楽しく親睦を深めた。
刀祢は剣道よりも風月流剣術のほうが好きである。
剣道は竹刀の先端から約4分の1の部分までを刃部とする。弦は背の部分なので常に竹刀の上になければならない。
有効打突にするには、相手より声をあげて、気迫、気力でも優っており、竹刀で相手を打った時、自分の体制が崩れてはいけない。
有効打突を打ち終わった後も常に警戒して、防御姿勢を取り続ける必要がある。そうしなければ有効打突は取り消しとなってしまうルールである。
風月流の剣術は木刀を使用し、鍔の部分より上部は全て刃とみなす。よって鍔の近くであっても刃なので、木刀全体が刃といってもいい。木刀の刃の部分であれば、どこで相手を打っても有効なのだ。
もちろん、寸止めがルールで決められているので、木刀で相手を打てば危険反則とみなして、負けとなる。
木刀で打つの時に気合の入った声などわざわざ発する必要はない。審判に対して、気迫や気合を見せる必要はない。
剣道と風月流剣術ではこのような違いがあり、刀祢は風月流剣術を選んだ。小学校の頃から剣道も嗜んではいたが、ずいぶんと剣道からは足が遠のいていた。
直哉は風月流剣術よりも、相手に体当たりもでき、相手を叩くことができる剣道のほうが今はお気に入りのようだ。直哉は五十嵐達に混じって、竹刀で入念に素振りをしている。
刀祢は入念に剣の軌道を確認するように竹刀をゆっくり振って、体の微調整を行う。竹刀を振る時、少しでもブレると気持ちが悪い。
段々と竹刀の振る早さを早くしていき、身体と竹刀を一体化させていく。入念に準備運動ができた所で、直哉が刀祢の元へやって来た。
「刀祢、剣道で俺と正式に試合をしようぜ。道場では刀祢に勝てないからな」
直哉は風月流剣術に入門してから1度も刀祢に勝てたことがないが、刀祢よりも長身で体格の良い直哉なら、剣道では分があるかもしれない。
「直哉との勝負を受けてもいいぞ」
「本当か。それなら賭けをしようぜ」
直哉は試合を本気で楽しむつもりらしい。爽やかな顔で笑っている。
「刀祢が勝負に負けたら、もっと剣道部へ参加すること。五十嵐達とも、もっと仲良くなること。俺が負けたら、俺の奢りで焼肉食べ放題だ」
正式な試合形式ということで主審は五十嵐が行い、副審は新浜と南が行うことになった。直哉と刀祢と開始線にしゃがんで竹刀を構える。五十嵐の合図で試合は開始される。
「キィィェエ―――!」
「セリャァア―――!」
お互いに気合の入った気勢を発する。刀祢は中段に構える。お互いに気合の入った気勢を発する。刀祢は中段に構える。直哉は上段に竹刀を構える。
刀祢はすり足で直哉の左側へ回り込むように円を描いていく。直哉は中央に立って、刀祢と真正面を向き合うようにすり足で刀祢を追う。
剣道では打ち込んだ時の姿勢が万全でないと有効打突にならない。よって、刀祢は円を描くように動きながら直哉に万全な体制を取らせないようにしているのである。
「キィィェエ―――!」
直哉は強引に刀祢の真正面に立つと、身体ごとぶつかるように飛びこみ面を決めにくる。
刀祢は直哉が飛び込み面で先手を取ろうとしていることを予測していた。だから円を描くように動いて、直哉の心を焦らす作戦にでた。
やはり直哉は焦って、強引に体制を立て直して、飛び込んできた。今の直哉の胴はがら空きだ。
「セリャァア―――!」
刀祢は飛び込んでくる直哉の左側へ抜けるように足を捌きながら、上半身と腕を回転させて、直哉の胴へ一閃する。
そしてお互いが交差した後に、2人共、身体を回転させて、体制を整えて体ごとぶつかり合う。
その時、主審、副審2人の赤旗が上がる。「胴あり」と宣言が告げられる。そして赤旗を下げて「勝負あり」と五十嵐が大きな声を出す。お互いに開始線まで戻って竹刀を収めて試合を終了。
道場の隅まで歩いて、刀祢も直哉も面を外す。数分の戦いなのに息があがる。
「刀祢はやっぱり強いな。剣道でもやられたか」
「直哉、風月流剣術の基本を忘れてるぞ」
直哉は少し悩むとハッとした顔になり、恥ずかしそうに髪を掻く。
風月流剣術は実戦剣術道場である。そのため木刀でどこを狙ってもいい。剣道のように面を狙う必要はない。一番大きな体の中心を狙うか、足を封鎖するため下段を狙うことが基本となっている。
刀祢にとって2番目に得意なのは胴薙ぎなのだ。そのことを直哉はすっかりと忘れていた。
「俺も、もう少し道場で基本を覚え直したほうがいいな」
直哉は刀祢に向かって爽やかに笑った。
「俺達も焼き肉食べ放題へ一緒に連れて行ってくれよ」
五十嵐達が駆け寄ってきて、直哉に自分達も誘えと言ってくる。
「わかった! 皆で割り勘な!」
焼肉は大勢で食べたほうが楽しいだろうと刀祢は思う。
剣道部が終わった時、男子部員達は集まって、焼肉食べ放題へ行き、楽しく親睦を深めた。