刀祢が天音、由香、秀樹の3人に稽古をつけていると、学校の剣道部が終わった直哉と心寧が道場へきた。
心寧と直哉は自分達の準備運動をしながら、刀祢の稽古の付け方を観察する。刀祢は基礎中の基礎を教えているようだ。
心寧と直哉が刀祢達に近づいてくる。
「刀祢、私達も仲間に入れてよ」
「ああ、いいぞ! 心寧、直哉、この3人に準備運動の模範演技を見せてあげてくれ」
「わかったわ! 直哉、準備運動しよう!」
直哉と心寧は木刀を中断に構え、ゆっくりとした動きで剣術の型を丁寧になぞっていく。さすがに直哉も心寧も木刀の先がブレたりせず、重心移動もスムーズで完璧だ。
それを見た天音、由香、秀樹の3人は完全に観客気分で拍手をしている。
「何を拍手してるんだよ。今度はお前達も一緒にするの。これは稽古なんだから。そのことを忘れてもらっては困る」
刀祢はそう言うと、それぞれ2人1組に分かれて、剣術の型を教えることになった。刀祢は天音を、心寧は由香を、直哉は秀樹を教える。1対1で、丁寧に体の動きと木刀の動きを教えていく。
そして何度も天音、由香、秀樹の3人は合格というまで、剣術の型を繰り返し行う。注意点があれば、すぐに矯正される。
「剣先がブレてる。木刀を真直ぐ振れていない。もっとゆっくりと、集中して」
慣れない3人は妙なところに力が入ってしまい、その癖が抜けない。そのため余分に体力が必要となり、息が荒くなっている。
何度も力の抜き方を教え、反復練習を行う。最後にはそれなりに見えるようになっていた。その時点で3人の体力が尽きた。秀樹が手をあげる。
「刀祢、少し休ませてください。ちょっと体力がキツイ」
「仕方がないな。3人共、少し休憩な」
3人には休憩をしてもらう。その間に心寧が刀祢に近寄ってくる。
「今日は剣道の面を持ってきたから、それを被るから、私と組手をして」
刀祢は女性全員に対して剣を向けられないというのに、心寧は何か勘違いしているようだ。原因は確かに心寧の額に怪我をさせたことだが今では、そのことを気にしていない。
女性と組手をして、怪我をさせる可能性があることがイヤなだけだ。心寧は完全に勘違いをしている。
刀祢も心寧から組手の稽古を頼まれれば断ることもできない。
「仕方ないな。組手1回だけだからな!」
「1回だけでいいよ。その代りに本気を出して。今日は面も持ってきたんだから、顔を狙っても怪我にはならないわ」
「そういう問題とは違うんだけどな」
刀祢は木刀を中断に構えて、心寧と対峙する。心寧も中段の姿勢をとる。心寧は腕を小さく折りたたんで高速で刀祢を攻撃する。心寧の必勝パターンだ。
しかし、何度も組手の相手をしている刀祢には通用しない。全ての剣を木刀で受け流し、絶妙な脚捌きで躱していく。しかし、刀祢から攻撃することはない。
「刀祢! 本気を出してって言ってるでしょ!」
「これでも一生懸命やってるよ! うるせーな!」
刀祢も悔しい気持ちはある。心寧が真剣に組手をしているのに、攻撃できない自分が情けない。しかし、こればかりは体が動かないのだから仕方がない。最後には刀祢が心寧に追い詰められ、1本を取られてしまった。
面を取った心寧の顔は、勝ったというのに笑顔はなかった。
「こんな勝ち方。勝っても嬉しくないんだからね」
「心寧が勝ったんだから良いだろう!」
天音と由香が拍手している。直哉と秀樹も頷いている。
天音が刀祢と心寧の元まで歩いてくる。天音が突然の質問をする。
「刀祢さんと心寧さんは付き合ってるんですか?」
「「え?」」
刀祢と心寧は天音の質問を聞いて2人共驚いた顔をする。
「心寧、お前、俺のこと好きだっけ? 嫌いだよな?」
「嫌いじゃないけど、ただの大事な友達よ。時々、口喧嘩はするけど」
「俺も心寧のことは友達だと思ってる。一番安心できるしな。お節介なところもあるけど」
刀祢と心寧の2人は互いに笑顔で答える。
それを聞いた天音は2人をじっと見て観察している。
道場が終わる時間まであとわずかだ。皆で話し合っている暇はない。
「それでは休憩は終わり。さっきの稽古の反復練習をしよう」
「「「はい!」」」
刀祢は天音、由香、秀樹の3人に今日教えた内容を、反復練習をさせる。直哉と心寧は丁寧に3人に指導していく。刀祢1人で指導していた時よりもスムーズだ。
3人は体力不足で倒れそうになっていたが、道場が終わるまでよく耐えてくれた。
「今日は3人共、お疲れ様。これが基礎になるから、稽古の時は必ず、先にこの練習は欠かさずにやってほしい。俺達も準備運動として毎日のように繰り返しやっている」
「「「わかりました! ありがとうございます!」」」
夜の部の道場も終わって、天音、由香、秀樹の3人は頭を下げて帰っていった。道場が閉鎖されて刀祢と心寧と直哉だけが道場に残る。
刀祢は父親の大輝からバイト代を日払いでもらった。これで金欠生活からも脱出できる。刀祢は封筒を持って満面の笑みを浮かべる。
刀祢は心寧と直哉に声をかける。
「いつも奢ってもらってるから、ファミレスでドリンクバーセットぐらいなら奢るよ」
直哉と心寧が刀祢の言葉を聞いて微笑んでいる。
心寧と直哉は自分達の準備運動をしながら、刀祢の稽古の付け方を観察する。刀祢は基礎中の基礎を教えているようだ。
心寧と直哉が刀祢達に近づいてくる。
「刀祢、私達も仲間に入れてよ」
「ああ、いいぞ! 心寧、直哉、この3人に準備運動の模範演技を見せてあげてくれ」
「わかったわ! 直哉、準備運動しよう!」
直哉と心寧は木刀を中断に構え、ゆっくりとした動きで剣術の型を丁寧になぞっていく。さすがに直哉も心寧も木刀の先がブレたりせず、重心移動もスムーズで完璧だ。
それを見た天音、由香、秀樹の3人は完全に観客気分で拍手をしている。
「何を拍手してるんだよ。今度はお前達も一緒にするの。これは稽古なんだから。そのことを忘れてもらっては困る」
刀祢はそう言うと、それぞれ2人1組に分かれて、剣術の型を教えることになった。刀祢は天音を、心寧は由香を、直哉は秀樹を教える。1対1で、丁寧に体の動きと木刀の動きを教えていく。
そして何度も天音、由香、秀樹の3人は合格というまで、剣術の型を繰り返し行う。注意点があれば、すぐに矯正される。
「剣先がブレてる。木刀を真直ぐ振れていない。もっとゆっくりと、集中して」
慣れない3人は妙なところに力が入ってしまい、その癖が抜けない。そのため余分に体力が必要となり、息が荒くなっている。
何度も力の抜き方を教え、反復練習を行う。最後にはそれなりに見えるようになっていた。その時点で3人の体力が尽きた。秀樹が手をあげる。
「刀祢、少し休ませてください。ちょっと体力がキツイ」
「仕方がないな。3人共、少し休憩な」
3人には休憩をしてもらう。その間に心寧が刀祢に近寄ってくる。
「今日は剣道の面を持ってきたから、それを被るから、私と組手をして」
刀祢は女性全員に対して剣を向けられないというのに、心寧は何か勘違いしているようだ。原因は確かに心寧の額に怪我をさせたことだが今では、そのことを気にしていない。
女性と組手をして、怪我をさせる可能性があることがイヤなだけだ。心寧は完全に勘違いをしている。
刀祢も心寧から組手の稽古を頼まれれば断ることもできない。
「仕方ないな。組手1回だけだからな!」
「1回だけでいいよ。その代りに本気を出して。今日は面も持ってきたんだから、顔を狙っても怪我にはならないわ」
「そういう問題とは違うんだけどな」
刀祢は木刀を中断に構えて、心寧と対峙する。心寧も中段の姿勢をとる。心寧は腕を小さく折りたたんで高速で刀祢を攻撃する。心寧の必勝パターンだ。
しかし、何度も組手の相手をしている刀祢には通用しない。全ての剣を木刀で受け流し、絶妙な脚捌きで躱していく。しかし、刀祢から攻撃することはない。
「刀祢! 本気を出してって言ってるでしょ!」
「これでも一生懸命やってるよ! うるせーな!」
刀祢も悔しい気持ちはある。心寧が真剣に組手をしているのに、攻撃できない自分が情けない。しかし、こればかりは体が動かないのだから仕方がない。最後には刀祢が心寧に追い詰められ、1本を取られてしまった。
面を取った心寧の顔は、勝ったというのに笑顔はなかった。
「こんな勝ち方。勝っても嬉しくないんだからね」
「心寧が勝ったんだから良いだろう!」
天音と由香が拍手している。直哉と秀樹も頷いている。
天音が刀祢と心寧の元まで歩いてくる。天音が突然の質問をする。
「刀祢さんと心寧さんは付き合ってるんですか?」
「「え?」」
刀祢と心寧は天音の質問を聞いて2人共驚いた顔をする。
「心寧、お前、俺のこと好きだっけ? 嫌いだよな?」
「嫌いじゃないけど、ただの大事な友達よ。時々、口喧嘩はするけど」
「俺も心寧のことは友達だと思ってる。一番安心できるしな。お節介なところもあるけど」
刀祢と心寧の2人は互いに笑顔で答える。
それを聞いた天音は2人をじっと見て観察している。
道場が終わる時間まであとわずかだ。皆で話し合っている暇はない。
「それでは休憩は終わり。さっきの稽古の反復練習をしよう」
「「「はい!」」」
刀祢は天音、由香、秀樹の3人に今日教えた内容を、反復練習をさせる。直哉と心寧は丁寧に3人に指導していく。刀祢1人で指導していた時よりもスムーズだ。
3人は体力不足で倒れそうになっていたが、道場が終わるまでよく耐えてくれた。
「今日は3人共、お疲れ様。これが基礎になるから、稽古の時は必ず、先にこの練習は欠かさずにやってほしい。俺達も準備運動として毎日のように繰り返しやっている」
「「「わかりました! ありがとうございます!」」」
夜の部の道場も終わって、天音、由香、秀樹の3人は頭を下げて帰っていった。道場が閉鎖されて刀祢と心寧と直哉だけが道場に残る。
刀祢は父親の大輝からバイト代を日払いでもらった。これで金欠生活からも脱出できる。刀祢は封筒を持って満面の笑みを浮かべる。
刀祢は心寧と直哉に声をかける。
「いつも奢ってもらってるから、ファミレスでドリンクバーセットぐらいなら奢るよ」
直哉と心寧が刀祢の言葉を聞いて微笑んでいる。