直哉にお願いして、莉奈の家へと送ってもらった。
莉奈の両親は海外赴任していて、莉奈はマンションで1人暮らしをしている。
直哉は何も言わずに、莉奈の家の場所を聞き、莉奈のマンションの前まで送ってくれた。こんな時に何も言わずに黙っていてくれる直哉の優しさが伝わってくる。
莉奈の家の前について、インターホンを押す。のんびりとした声が聞こえ、家の中から莉奈がパジャマ姿で現れる。莉奈の顔を見て、安堵して莉奈に抱き着いた。
「どうしたの心寧? 顔色が青いわよ。一体、何があったの? 家の中でゆっくりと話をしようね」
「うん、莉奈、ありがとう。急に泊めてもらってごめんね。1人でいると頭が混乱しそうで」
「気にすることないよ。私達、友達でしょ。いつでも泊まりにきてね」
「うん、ありがとう」
莉奈は部屋の中へ連れて入ると、1度ギュッと体を抱きしめてくれる。
「待っててね。今、お風呂と料理の準備をするから。ゆっくりと心を落ち着けてよう」
「ありがとう。莉奈の言うとおりにする。後で話を聞いてね」
莉奈は私をリビングのソファに座らせて、お風呂場に行って湯を張ってくれる。そしてキッチンへ行って、手早く料理をしてくれる。
莉奈は料理がすごく上手い。莉奈の料理は美味しい。莉奈に料理を教えてもらっているが、莉奈のように上手くできない。刀祢にも「しょっぱい」と言われたし―――
莉奈はテーブルの上にオムライスを置いてくれる。ケチャップで猫の絵が書いていてとても可愛い。
一口、オムライスを口の中へ入れると、急にお腹が空いてきた。夢中でオムライスを食べる。フワフワの卵が口の中で蕩けて、とても美味しい。
「莉奈、オムライス、とっても美味しいわ。莉奈はやっぱり料理が上手ね」
「褒めてくれてありがとう。顔色が良くなってきたね」
「さっきよりも、気分がずいぶん、良くなったから。待ってくれてありがとう」
「次はお風呂でゆっくりしてね」
「うん、体に残っている緊張をほぐしてくる」
莉奈は自分の部屋へ入っていって、替えのパジャマを渡してくれる。脱衣所へ行って服を脱いでお風呂場に入る。
お風呂に浸かりながら、今日の剣斗兄さんと刀祢の試合は凄かった。あんな真剣勝負は初めて見た。剣斗兄さんの剣技も見事だったが、刀祢の剣技も素晴らしかった。本物の神剣勝負の迫力に圧倒された。あんな試合、怖くてできない。
小学校の時、刀祢が優勝した試合のことを思い出す。あの時の刀祢は恰好良かった。あの時は刀祢の剣技に見惚れていた。うかつにも刀祢に初恋をしたことを思い出す。なんだか悔しい。こんな恥ずかしいことは誰にも言えない。
湯船の中に頭まで浸かる。恥ずかしさで火照った体にお湯が染み渡る。ゆっくりと湯船に浸かってからお風呂を出る。
脱衣所でパジャマに着替えて、バスタオルで髪の毛を結って、莉奈の部屋へ向かう。ドアを開けると、莉奈はベッドで寝ころんでいた。
莉奈はベッドに端に座って、隣へ座るように、手でベッドをポンポンと叩く。莉奈の隣に座ると、莉奈が優しく抱きしめてくれる。莉奈の体温が伝わってきて、莉奈の体から甘くて落ち着く香りがして、とても気分が落ち着く。
「さあ、お話をしようか。先に心寧から今日あったとこを話してね。心配したんだから」
「今日、道場で剣斗兄さんと刀祢が本気の試合をしたの!」
「本気の試合って?」
「寸止めしない、木刀での試合。木刀で叩き合う試合……」
「そんなことをすれば、本気で怪我するじゃない!なぜ、刀祢くんがそんな危ない試合をしたの?」
今日、道場であった出来事の全てを莉奈に話す。話していくうちに段々と気分が落ち込んでくるのがわかる。今まで頼ってきた剣斗兄さんを否定されたことが大きい。
しかし、館長の言うことは正しい。剣斗兄さんは礼儀にうるさく、規則正しく、厳格だった。そして、それを他人に強要もしていた。生徒会長になってからは全生徒が対象になった。規律正しくなれば、風紀も乱れなくて良いと賛成に思っていたけど、他の生徒達は心の中では剣斗兄さんの方針が窮屈(きゅうくつ)だったみたい。
(私は間違っていたんだろうか)
自分の心の中で何かが崩れ去ってしまったように感じる。これからどうすればいいんだろう。
「刀祢君は試合の後、何か心寧に言ってなかったかな?」
「私は私のままでいいって言われた。そのままの私でいいんだって」
「そうだね。刀祢君の言う通りだと私も思うよ。刀祢君は優しいね」
「刀祢は優しい―――」
刀祢はいつも稽古の組手の時、顔を狙ってこない。そして組手稽古をやりたがらない。組手をする時は本気になれないみたい。だから刀祢に勝つことができる。今日の試合を見て知った。
昔に組手稽古をした時に、心寧から突っ込んでいき、刀祢の手元がくるって、額に刀祢の木刀が当たったことがあった。傷はきれいに治ったけど、その時から、刀祢は心寧との組手を避けるようになった。
今までは、女性だから、刀祢は顔を傷つけたくないんだと思っていた。でも、それだけではないみたい。刀祢は優しすぎると館長は言っていた。
よく考えれば、クラスの皆と距離を離しているのも、クラスの皆へ配慮した優しさだし、刀祢が起きていれば、クラスの皆が怖がるから、授業中も寝ているのも刀祢の優しさ。
今日まではそのことに気づかなかった。刀祢が自分勝手な行動をしていると思っていたから。だから、結構、キツイことも言ってきたと思う。
(そのことはゴメンなさい)
でも、刀祢もクラスの皆と仲良くしてほしかった。だから剣斗兄さんのように強引に仲間に入れようとしていた。
それは間違いだとわかった。でも、刀祢の優しさに私もクラスの皆もよりかかったままでいいんだろうか。そのことが刀祢のためになるんだろうか。
また刀祢は何も言わないで黙って、全てを自分で背負おうとするのだろう。それを見ているのは違うと思う。
刀祢の優しさには感謝するけど、全てを自分一人で抱えようとする性格は我慢できない。
心寧は刀祢のことを大事な友達だと思ってるし、直哉や莉奈や杏里だって刀祢の友達だって思ってる。刀祢の優しさに頼ってばかりはいられない。
(刀祢、今までありがとう。でも刀祢1人に背負わせるのは違うと思う)
「答えは出たのかな?」
「うん。刀祢の優しさには感謝するけど、それに甘えるのは間違ってると思う。私は私らしく刀祢を助けたいし、刀祢に自分の殻にこもられたくない。」
今まで黙って、見守ってくれていた莉奈が心寧に声をかける。
「これからも刀祢に私の考えを伝えていこうと思う。私は私らしく、刀祢の友達でいようと思う。」
「それでいいよ。心寧らしくていい。刀祢君もそういう心寧だから安心できるんだよ」
莉奈は嬉しそうに、心寧に抱き着いて、にっこりと微笑んだ。
莉奈の両親は海外赴任していて、莉奈はマンションで1人暮らしをしている。
直哉は何も言わずに、莉奈の家の場所を聞き、莉奈のマンションの前まで送ってくれた。こんな時に何も言わずに黙っていてくれる直哉の優しさが伝わってくる。
莉奈の家の前について、インターホンを押す。のんびりとした声が聞こえ、家の中から莉奈がパジャマ姿で現れる。莉奈の顔を見て、安堵して莉奈に抱き着いた。
「どうしたの心寧? 顔色が青いわよ。一体、何があったの? 家の中でゆっくりと話をしようね」
「うん、莉奈、ありがとう。急に泊めてもらってごめんね。1人でいると頭が混乱しそうで」
「気にすることないよ。私達、友達でしょ。いつでも泊まりにきてね」
「うん、ありがとう」
莉奈は部屋の中へ連れて入ると、1度ギュッと体を抱きしめてくれる。
「待っててね。今、お風呂と料理の準備をするから。ゆっくりと心を落ち着けてよう」
「ありがとう。莉奈の言うとおりにする。後で話を聞いてね」
莉奈は私をリビングのソファに座らせて、お風呂場に行って湯を張ってくれる。そしてキッチンへ行って、手早く料理をしてくれる。
莉奈は料理がすごく上手い。莉奈の料理は美味しい。莉奈に料理を教えてもらっているが、莉奈のように上手くできない。刀祢にも「しょっぱい」と言われたし―――
莉奈はテーブルの上にオムライスを置いてくれる。ケチャップで猫の絵が書いていてとても可愛い。
一口、オムライスを口の中へ入れると、急にお腹が空いてきた。夢中でオムライスを食べる。フワフワの卵が口の中で蕩けて、とても美味しい。
「莉奈、オムライス、とっても美味しいわ。莉奈はやっぱり料理が上手ね」
「褒めてくれてありがとう。顔色が良くなってきたね」
「さっきよりも、気分がずいぶん、良くなったから。待ってくれてありがとう」
「次はお風呂でゆっくりしてね」
「うん、体に残っている緊張をほぐしてくる」
莉奈は自分の部屋へ入っていって、替えのパジャマを渡してくれる。脱衣所へ行って服を脱いでお風呂場に入る。
お風呂に浸かりながら、今日の剣斗兄さんと刀祢の試合は凄かった。あんな真剣勝負は初めて見た。剣斗兄さんの剣技も見事だったが、刀祢の剣技も素晴らしかった。本物の神剣勝負の迫力に圧倒された。あんな試合、怖くてできない。
小学校の時、刀祢が優勝した試合のことを思い出す。あの時の刀祢は恰好良かった。あの時は刀祢の剣技に見惚れていた。うかつにも刀祢に初恋をしたことを思い出す。なんだか悔しい。こんな恥ずかしいことは誰にも言えない。
湯船の中に頭まで浸かる。恥ずかしさで火照った体にお湯が染み渡る。ゆっくりと湯船に浸かってからお風呂を出る。
脱衣所でパジャマに着替えて、バスタオルで髪の毛を結って、莉奈の部屋へ向かう。ドアを開けると、莉奈はベッドで寝ころんでいた。
莉奈はベッドに端に座って、隣へ座るように、手でベッドをポンポンと叩く。莉奈の隣に座ると、莉奈が優しく抱きしめてくれる。莉奈の体温が伝わってきて、莉奈の体から甘くて落ち着く香りがして、とても気分が落ち着く。
「さあ、お話をしようか。先に心寧から今日あったとこを話してね。心配したんだから」
「今日、道場で剣斗兄さんと刀祢が本気の試合をしたの!」
「本気の試合って?」
「寸止めしない、木刀での試合。木刀で叩き合う試合……」
「そんなことをすれば、本気で怪我するじゃない!なぜ、刀祢くんがそんな危ない試合をしたの?」
今日、道場であった出来事の全てを莉奈に話す。話していくうちに段々と気分が落ち込んでくるのがわかる。今まで頼ってきた剣斗兄さんを否定されたことが大きい。
しかし、館長の言うことは正しい。剣斗兄さんは礼儀にうるさく、規則正しく、厳格だった。そして、それを他人に強要もしていた。生徒会長になってからは全生徒が対象になった。規律正しくなれば、風紀も乱れなくて良いと賛成に思っていたけど、他の生徒達は心の中では剣斗兄さんの方針が窮屈(きゅうくつ)だったみたい。
(私は間違っていたんだろうか)
自分の心の中で何かが崩れ去ってしまったように感じる。これからどうすればいいんだろう。
「刀祢君は試合の後、何か心寧に言ってなかったかな?」
「私は私のままでいいって言われた。そのままの私でいいんだって」
「そうだね。刀祢君の言う通りだと私も思うよ。刀祢君は優しいね」
「刀祢は優しい―――」
刀祢はいつも稽古の組手の時、顔を狙ってこない。そして組手稽古をやりたがらない。組手をする時は本気になれないみたい。だから刀祢に勝つことができる。今日の試合を見て知った。
昔に組手稽古をした時に、心寧から突っ込んでいき、刀祢の手元がくるって、額に刀祢の木刀が当たったことがあった。傷はきれいに治ったけど、その時から、刀祢は心寧との組手を避けるようになった。
今までは、女性だから、刀祢は顔を傷つけたくないんだと思っていた。でも、それだけではないみたい。刀祢は優しすぎると館長は言っていた。
よく考えれば、クラスの皆と距離を離しているのも、クラスの皆へ配慮した優しさだし、刀祢が起きていれば、クラスの皆が怖がるから、授業中も寝ているのも刀祢の優しさ。
今日まではそのことに気づかなかった。刀祢が自分勝手な行動をしていると思っていたから。だから、結構、キツイことも言ってきたと思う。
(そのことはゴメンなさい)
でも、刀祢もクラスの皆と仲良くしてほしかった。だから剣斗兄さんのように強引に仲間に入れようとしていた。
それは間違いだとわかった。でも、刀祢の優しさに私もクラスの皆もよりかかったままでいいんだろうか。そのことが刀祢のためになるんだろうか。
また刀祢は何も言わないで黙って、全てを自分で背負おうとするのだろう。それを見ているのは違うと思う。
刀祢の優しさには感謝するけど、全てを自分一人で抱えようとする性格は我慢できない。
心寧は刀祢のことを大事な友達だと思ってるし、直哉や莉奈や杏里だって刀祢の友達だって思ってる。刀祢の優しさに頼ってばかりはいられない。
(刀祢、今までありがとう。でも刀祢1人に背負わせるのは違うと思う)
「答えは出たのかな?」
「うん。刀祢の優しさには感謝するけど、それに甘えるのは間違ってると思う。私は私らしく刀祢を助けたいし、刀祢に自分の殻にこもられたくない。」
今まで黙って、見守ってくれていた莉奈が心寧に声をかける。
「これからも刀祢に私の考えを伝えていこうと思う。私は私らしく、刀祢の友達でいようと思う。」
「それでいいよ。心寧らしくていい。刀祢君もそういう心寧だから安心できるんだよ」
莉奈は嬉しそうに、心寧に抱き着いて、にっこりと微笑んだ。