それから、約二ヶ月、入院生活が続いた。
その間、体を自由に動かすためのリハビリと、ロボットのような左腕に慣れるためのリハビリを行った。
その二つのリハビリは、決して甘くはなく、体力的にも精神的にもきついものだった。何度もやめたくなったし、実際ボイコットした日もあった。
それでも、お見舞いに来てくれるおばあちゃんとおじいちゃん、支えてくれた葉上先生のおかげで、なんとかリハビリを続けられた。
けれど、心にぽっかり空いた喪失感は、どうやっても消え失せてはくれなかった。
退院の日が決まり、これからはおばあちゃんとおじいちゃんの家で暮らすことになったとき。
葉上先生が、わたしに告げた。
『学校の先生には、左腕のことをちゃんと説明しといたほうがいい』
最初は嫌だと反対した。
だけど、定期検診の際に学校を欠席したり、左腕に何かあったりした場合、学校側が事情を知らなければ不審に思われる。
そう説得されて、仕方なく了解した。
そして雪が溶け、嫌いな白色が土に還った春。
退院を喜んでくれたおばあちゃんとおじいちゃんと、新たな生活が始まった。
しかし、辛いリハビリを終えられた達成感に満ちたわたしは、知らなかった。頭にすらなかったんだ。
忘れられない喪失感だけでなく、これからの日々どれだけ秘密に足掻き、孤独と闘うことになるのかを――。
◇