その日以降、彼女は昼休みに屋上に現れることはなかった。
僕の心の中に何か不思議な気持ちが存在していた。
なんだろう、この感覚は。
僕はここで何かを待っている?
彼女とまたここで会えるのではないかと期待をしているのだろうか?
でも、その日も彼女は現れなかった。
この前は偶然ここに来ただけなんだから来なくて当たり前なのに、いつの間にか落ち込んでいるそんな自分に苦笑する。
午後に美術の授業があった。彼女のいるA組との合同だ。
授業は人数の多いA組の教室で行われるため、僕はいつものように美術用具を持ってA組の教室へと向かった。
教室に入るなり、僕は無意識に彼女の姿を捜していた。
すぐに賑やかに話をしている男女数人のグループの輪の中に彼女を見つけた。
――いた!
僕の心臓の鼓動がキュッと高鳴る。
そんな自分に少しびっくりしながらも、僕の目は彼女の姿を追っていた。
彼女はとても楽しそうに笑いながら喋っている。
グループの中でも一番テンションが高いのではないだろうか。きっとクラスの中でもけっこう目立っている存在なんだろう。
話の深い内容はよく分からないが、とても楽しそうに喋っているように見えた。
その時だ。彼女の視線が一瞬こちらに向いた。
僕に気づいたと思った。
手を挙げて挨拶をしようと思ったのだが、彼女はすぐに友達のほうに向き直り、何事も無かったように友達と喋り続けていた。
――あれ? 気づかなかったのかな?
結局、その日は彼女と話をすることなく美術の時間は終わった。僕の心の中にモヤモヤ感が残っていた。
放課後になると、僕は部活のため部室へと急いだ。
僕はテニス部に属してる。
体を動かせば少しはこのモヤモヤ感がすっきりするかと、今日はいつもより懸命に体を動かした。けれども、やはり心の中に燻るモヤモヤ感は抜けることはなかった。
練習の終わりに、学校の近くにある中央公園までランニングをすることが日課になっていた。
テニス部員十数人が大きな掛け声と共に校門を抜け、中央公園へと向かう。
学校内では特に気にならないのだが、学校の外で大きな声を上げることにはちょっと抵抗があった。
公園内の遊歩道に入ると、帰宅途中の生徒が多く歩いていた。そ
の時だ、見覚えのある女子生徒の後ろ姿が僕の視界に入った。
まだ遠目であったが、それを彼女だと認識するのに時間はかからなかった。
だが、同時に強いショックが僕の心を襲った。彼女の横に親しそうに男子生徒が並んでに歩いていたからだ。
僕は反射的に彼女から見えないように反対側の列に移り、隠れながら走った。テニス部員の列は二人を追い抜いていく。
その瞬間、僕はちらりと二人のほうに目をやった。二人とも話に夢中で、僕に気づく気配はなかった。
彼女はとても楽しそうに笑っていた。二人の歩いている距離感とその笑顔の様子から、かなり親しげな関係であることが僕でも分かる。
その男子生徒は見覚えのある顔だった。確かサッカー部だ。
――やっぱり彼氏いたんだ・・・。
僕はあらためてショックを受けている自分にびっくりしていた。
――え? 何?
何で僕はショックを受けているんだ?
何を期待していたのだろうか?
すごい美少女というわけではないが、まあ可愛い子なんだから彼氏がいて当たり前だろう。そんなことは分かっていたはずだ。
いや、僕だって彼女に対してどうこう想っているわけではない。
そうだ。別になんとも思ってない。
悪いこともしていない。
関係ない・・。
僕は必死に自分にそう言い聞かせ続けた。
僕の心の中に何か不思議な気持ちが存在していた。
なんだろう、この感覚は。
僕はここで何かを待っている?
彼女とまたここで会えるのではないかと期待をしているのだろうか?
でも、その日も彼女は現れなかった。
この前は偶然ここに来ただけなんだから来なくて当たり前なのに、いつの間にか落ち込んでいるそんな自分に苦笑する。
午後に美術の授業があった。彼女のいるA組との合同だ。
授業は人数の多いA組の教室で行われるため、僕はいつものように美術用具を持ってA組の教室へと向かった。
教室に入るなり、僕は無意識に彼女の姿を捜していた。
すぐに賑やかに話をしている男女数人のグループの輪の中に彼女を見つけた。
――いた!
僕の心臓の鼓動がキュッと高鳴る。
そんな自分に少しびっくりしながらも、僕の目は彼女の姿を追っていた。
彼女はとても楽しそうに笑いながら喋っている。
グループの中でも一番テンションが高いのではないだろうか。きっとクラスの中でもけっこう目立っている存在なんだろう。
話の深い内容はよく分からないが、とても楽しそうに喋っているように見えた。
その時だ。彼女の視線が一瞬こちらに向いた。
僕に気づいたと思った。
手を挙げて挨拶をしようと思ったのだが、彼女はすぐに友達のほうに向き直り、何事も無かったように友達と喋り続けていた。
――あれ? 気づかなかったのかな?
結局、その日は彼女と話をすることなく美術の時間は終わった。僕の心の中にモヤモヤ感が残っていた。
放課後になると、僕は部活のため部室へと急いだ。
僕はテニス部に属してる。
体を動かせば少しはこのモヤモヤ感がすっきりするかと、今日はいつもより懸命に体を動かした。けれども、やはり心の中に燻るモヤモヤ感は抜けることはなかった。
練習の終わりに、学校の近くにある中央公園までランニングをすることが日課になっていた。
テニス部員十数人が大きな掛け声と共に校門を抜け、中央公園へと向かう。
学校内では特に気にならないのだが、学校の外で大きな声を上げることにはちょっと抵抗があった。
公園内の遊歩道に入ると、帰宅途中の生徒が多く歩いていた。そ
の時だ、見覚えのある女子生徒の後ろ姿が僕の視界に入った。
まだ遠目であったが、それを彼女だと認識するのに時間はかからなかった。
だが、同時に強いショックが僕の心を襲った。彼女の横に親しそうに男子生徒が並んでに歩いていたからだ。
僕は反射的に彼女から見えないように反対側の列に移り、隠れながら走った。テニス部員の列は二人を追い抜いていく。
その瞬間、僕はちらりと二人のほうに目をやった。二人とも話に夢中で、僕に気づく気配はなかった。
彼女はとても楽しそうに笑っていた。二人の歩いている距離感とその笑顔の様子から、かなり親しげな関係であることが僕でも分かる。
その男子生徒は見覚えのある顔だった。確かサッカー部だ。
――やっぱり彼氏いたんだ・・・。
僕はあらためてショックを受けている自分にびっくりしていた。
――え? 何?
何で僕はショックを受けているんだ?
何を期待していたのだろうか?
すごい美少女というわけではないが、まあ可愛い子なんだから彼氏がいて当たり前だろう。そんなことは分かっていたはずだ。
いや、僕だって彼女に対してどうこう想っているわけではない。
そうだ。別になんとも思ってない。
悪いこともしていない。
関係ない・・。
僕は必死に自分にそう言い聞かせ続けた。