彼女と逢うことができなくなってから初めての春が訪れた。
今年は、さらに桜の開花が早くなったようだ。
でも、暖かく心地よい風の香りは一年前と変わらない。
そう、だからこそ、この春の風は彼女のことを強く思い出させる。
懐かしく、悲しく、とても短かったけど、とても楽しかった彼女と一緒に過ごした時を。
その変わらない春の香りは、まるで彼女が僕を包み込んでくれている、そんな気持ちにさせてくれた。
君は、僕が僕らしくあればいいと言ってくれた。今のまま、無理に変わらないでもいいと言ってくれた。
でも僕はもう少し変われるようにがんばってみようと思う。
僕は君のようになりたい。
あの日、君は、君らしいってどういうことなのかって訊いてきたよね。
僕は思う。
本当は君は内気で人見知り、臆病で気が弱い。でも、君はそんな弱い自分に正面から立ち向かい、明るく、積極的になろうと懸命に頑張っていたんだ。
病気の恐怖と戦いながら、不安でいっぱいだったろうに、まわりの人には決して辛い顔を見せず、いつも明るい笑顔を貫いていた。
その強さが君らしさだ。
その明るさが君らしさだ。
そう。君はいつも明るく、眩しく、そして輝いてた。
それは君が懸命に頑張って演じていたもう一人の咲季。
でも、それが本当の君らしい君なんだ。その頑張りこそが君の笑顔を輝かせていた。
僕はそんな君を好きになったんだ。いつも懸命に頑張っていた咲季が好きだった。
そんな君のように、僕はなりたい。
咲季のように強くなりたい。そうなれるようがんばってみるよ。
それが僕が生きている証。そしてそれは、君が生きていた証。
どこまでできるか分からない。
だけど、僕が僕らしくできることを精一杯やってみるよ。
それが、君が僕に渡してくれた心のバトンだと思うから。
だから、それを空の上から静かに見守っててね。
*****
今日は大学に入学してからの最初に日、新入生オリエンテーションだ。
この四月から僕もついに大学生になった。
キャンパス内の大きな階段教室には溢れんばかりの新入生が集まって大学の授業の説明会が開かれていた。
ざわついた教室内では、もう何人かのグループがラインの交換など積極的に仲間作りを始めている。僕はというと消極的性格はなかなか変わっておらず、ちょっと尻込みをしながら、一人で教室の隅のほうに座っていた。
『ほらぁ! 壁は自分から壊せるんだよ!』
ああ、また彼女の恫喝するような声が頭に響く。
――分かったよ。いつもいつもうるさいな。
“自分は変わる”・・・だなんて彼女に決意をしたせいだろうか。
消極的な僕になると必ずと言っていいほど心の中に彼女は現れた。
――たまには空の上から黙って見守っててよ。
『ありのままの君で行けばいいんだよ!』
――だから分かってるって!
僕はそのままひとつのグループの輪の中に入り、ペコリと頭を下げ自己紹介をした。
僕はありのままの自分をそのまま見せた。
気取ることなんてしなかった。ワザと明るく振る舞うこともしなかった。
とてもぎこちない、下手くそな挨拶だったと思う。
「よろしく、名倉君!」
みんなは僕を暖かく迎えてくれた。
彼女は今も紛れもなく僕の中で生きている。
『ねえ、どうして人は人を好きになるのかな?』
また彼女の声が聞こえる。
そして、僕はいつものように空に向かって答えるんだ。
「人を好きになるのに理由なんかないよ。人は人を好きになるために生まれてきたんだから」
今年は、さらに桜の開花が早くなったようだ。
でも、暖かく心地よい風の香りは一年前と変わらない。
そう、だからこそ、この春の風は彼女のことを強く思い出させる。
懐かしく、悲しく、とても短かったけど、とても楽しかった彼女と一緒に過ごした時を。
その変わらない春の香りは、まるで彼女が僕を包み込んでくれている、そんな気持ちにさせてくれた。
君は、僕が僕らしくあればいいと言ってくれた。今のまま、無理に変わらないでもいいと言ってくれた。
でも僕はもう少し変われるようにがんばってみようと思う。
僕は君のようになりたい。
あの日、君は、君らしいってどういうことなのかって訊いてきたよね。
僕は思う。
本当は君は内気で人見知り、臆病で気が弱い。でも、君はそんな弱い自分に正面から立ち向かい、明るく、積極的になろうと懸命に頑張っていたんだ。
病気の恐怖と戦いながら、不安でいっぱいだったろうに、まわりの人には決して辛い顔を見せず、いつも明るい笑顔を貫いていた。
その強さが君らしさだ。
その明るさが君らしさだ。
そう。君はいつも明るく、眩しく、そして輝いてた。
それは君が懸命に頑張って演じていたもう一人の咲季。
でも、それが本当の君らしい君なんだ。その頑張りこそが君の笑顔を輝かせていた。
僕はそんな君を好きになったんだ。いつも懸命に頑張っていた咲季が好きだった。
そんな君のように、僕はなりたい。
咲季のように強くなりたい。そうなれるようがんばってみるよ。
それが僕が生きている証。そしてそれは、君が生きていた証。
どこまでできるか分からない。
だけど、僕が僕らしくできることを精一杯やってみるよ。
それが、君が僕に渡してくれた心のバトンだと思うから。
だから、それを空の上から静かに見守っててね。
*****
今日は大学に入学してからの最初に日、新入生オリエンテーションだ。
この四月から僕もついに大学生になった。
キャンパス内の大きな階段教室には溢れんばかりの新入生が集まって大学の授業の説明会が開かれていた。
ざわついた教室内では、もう何人かのグループがラインの交換など積極的に仲間作りを始めている。僕はというと消極的性格はなかなか変わっておらず、ちょっと尻込みをしながら、一人で教室の隅のほうに座っていた。
『ほらぁ! 壁は自分から壊せるんだよ!』
ああ、また彼女の恫喝するような声が頭に響く。
――分かったよ。いつもいつもうるさいな。
“自分は変わる”・・・だなんて彼女に決意をしたせいだろうか。
消極的な僕になると必ずと言っていいほど心の中に彼女は現れた。
――たまには空の上から黙って見守っててよ。
『ありのままの君で行けばいいんだよ!』
――だから分かってるって!
僕はそのままひとつのグループの輪の中に入り、ペコリと頭を下げ自己紹介をした。
僕はありのままの自分をそのまま見せた。
気取ることなんてしなかった。ワザと明るく振る舞うこともしなかった。
とてもぎこちない、下手くそな挨拶だったと思う。
「よろしく、名倉君!」
みんなは僕を暖かく迎えてくれた。
彼女は今も紛れもなく僕の中で生きている。
『ねえ、どうして人は人を好きになるのかな?』
また彼女の声が聞こえる。
そして、僕はいつものように空に向かって答えるんだ。
「人を好きになるのに理由なんかないよ。人は人を好きになるために生まれてきたんだから」