愛理沙との別れがあって1週間が過ぎた。
学校へ楓乃が戻ってきた。
楓乃は素直に愛理沙に謝ったが、楓乃は涼への想いを断ち切るためにグループから離れると宣言した。
愛理沙も聖香も楓乃のことを止めることはしなかった。
涼、湊、陽太の3人は少し離れた場所から女子達を見守っていた。
楓乃はふっきれたような顔で涼に手を振ると、違う女子のグループへと戻っていった。
涼には愛理沙しかいない。愛理沙しか選べない。
楓乃は別の男子を見つけたほうが良い。この結果で良かったと涼は思っている。
もう少し早く、楓乃のことをフッていれば、愛理沙と楓乃も仲良くできたのにと思うと、涼の中に少し後悔が残る。
7月に入り、期末考査テストが始まった。
涼は愛理沙にテスト勉強を深夜まで教えてもらって、なんとか期末考査テストを乗り切った。
これからは大学進学のことも考えていかなければならない。
愛理沙に相談すると、愛理沙もそのことで悩んでいたらしい。
夏休前に予備校を巡って、大学進学のために予備校に通うことにした。
最近、愛理沙はアパートに戻ってきてから、ピンクダイヤのネックレスをしていない。愛理沙に理由を聞くと、もう両親の責任を自分は負わないと決めたという。
「もう、あのバス事故のことで自分を責めたりするのはやめたの。お父さんとお母さんに申し訳ないもの」
「そのほうがいい。あの事故は俺と愛理沙では止めようがなかった事故だ。俺達が悔やんでも仕方がない」
「これからは涼と2人で前を向いて歩いて行くって決めたの。だから、お母さんのネックレスとはお別れするの」
そう言って、愛理沙は涼に向かって優しく微笑んだ。とても穏やかで澄んだ笑みだった。
今は、涼の仏壇の隣にピンクダイヤのネックレスを置いて、毎朝、愛理沙は拝んでいる。
とても愛理沙に似合っていたネックレスだったので、涼としてはとても残念に気持ちになった。そして愛理沙も、少し寂しい思いをしているのではないかと推測する。
テストが終わって、授業が午前中までになった。
涼は愛理沙に先にアパートへ戻ってもらって、涼1人で駅前のロータリー広場までロードレーサーで走る。
ロードレーサーを駐輪して、涼は1人で大型デパートの中への歩いて行く。
デパートの中に大きな宝石店のテナントが開店していた。
涼が宝石店に入るのは、これが初めてだ。
店内は女性陣が多く、若いカップルも多い。
場違いな場所に来たみたいで、涼は1歩後退って、店から出ようとする。
その時に穏やかな笑顔をたたえた、宝石店のお姉さんが声をかけてくれた。
「お客様…このお店は初めてでしょうか? 私でしたらご案内いたします」
「あ…ありがとうございます。俺……こういう店は初めてで……」
店員のお姉さんはにっこりと微笑んで、涼を安心させる。
「今日はどのようなご用件ですか? もしかすると……彼女さんのお誕生日のプレゼントかしら?」
実は愛理沙の誕生日は7月7日。すでに誕生日は過ぎてしまっている。
中間考査テストで忙しくて、愛理沙の誕生日のプレゼントを用意してあげられなかったことを、涼は後悔していた。
「実はそうなんです……色々あって……誕生日を過ぎてしまって……買ってあげたいんです」
「優しい彼氏さんですね。彼女さんが羨ましいわ」
店員のお姉さんに、そう言われて、涼は照れてしまう。営業トークとわかっていても、褒められるのは嬉しいものだ。
「どのような品をお探しですか? ご要望があれば、そこから商品をご紹介していきます」
「あの……胸にダイヤのネックレスが欲しいんです。できれば小さいダイヤではなくて、それなりに大きなダイヤを1つ」
「それでは、こちらの商品棚のセール品はどうでしょうか? 今、若いカップルの方に好評ですよ」
店員のお姉さんの笑顔が深まる。完全な営業の誘導だ。
「お姉さん……内緒で教えてほしいんですけど……宝石の値段って、下取りに出した時に驚くほど安い時があるじゃないですか? セール品はやっぱり安くなるんですか?」
急に店員のお姉さんの顔が引きつる。そして小さな声で涼にだけ聞こえるようにささやく。
「今のセール品は、在庫整理の品なの……お店には内緒だけど……きちんとした宝石を買いたかったら、保証書の付いた、きっちりとした宝石を買っておいたほうがいいわ……それにしも良く知ってるわね」
別に涼は何の情報も知らなかった。セール品という言葉にひっかかっただけだ。愛理沙に買うのであれば、セール品などではなく、きちんとした宝石を買ってあげたいと思っていただけだ。
店員のお姉さんが別の商品棚に連れて行ってくれる。値段は張るが、どれもセール品よりもデザインがシンプルに見える。
「実はね……デザインに凝ってるとデザイン代が高いの。ダイヤはカットと輝きで決まるから、シンプルなほうが値打ちがあることも多いのよ」
そんなにペラペラと宝石店の内情を話てしまっていいのだろうか? 店員のお姉さんの好意だと思って、黙って聞いて、後学のために覚えておこう。
「これを見たいんですけど……」
涼はデザインはシンプルだが、光り輝いているダイヤを指さす。
「お客様、良い品を選ばれたと思います。私もこの品なら自信を持ってお勧めできます」
丸型の少し大きなダイヤがきれいにカットされてキラキラと輝いている。ネックレスはプラチナだ。
涼が予想していたよりも、予算をかなりオーバーしている。
しかし、涼はこのダイヤのネックレスが気に入った。
愛理沙がダイヤのネックレスを着けている所をイメージする。とてもきれいで美しい。
「これを買います」
「ありがとうございます」
お姉さんは深々と礼をして、ダイヤのネックレスをジュエリーボックスに入れて、包装袋へ入れてくれる。
レジで支払いを済ませて、小さな紙袋を持って宝石店を出る。
デパートを出て駅前のターミナル広場に着いた所から愛理沙に連絡をして、いつもの公園で待っていてもらう。
駐輪場からロードレーサーを出して、急いで高台へ向かってロードレーサーを走らせる。
夕焼けの中をブランコに座って愛理沙が待っている。
涼はロードレーサーを公園の外に止めて、愛理沙の近くへ歩いていく。
「どうしたの……涼? いつも、一緒に公園に来ていたのに……急に呼び出すなんて?」
「すぐに愛理沙に渡したいモノがあって……誕生日、遅れてゴメン。改めて誕生日おめでとう」
涼は宝石店の紙袋を愛理沙に手渡す。愛理沙は紙袋の中を見て驚いている。
「これ……高かったんじゃないの?」
「まずは中身を見てよ……気に入ってくれると嬉しいんだけどさ」
愛理沙は慎重に包装袋からジュエリーボックスを取り出す。包装袋から出て来た保証書を見て驚いている。
そしてジュエリーボックスを開けて、ダイヤのプラチナのネックレスを見て、目を丸くして驚く。
「愛理沙のピンクダイヤのネックレス……とても似合っていたからさ。これからは買ってきたネックレスをつけてくれると嬉しい」
「ありがとう……とても嬉しい……一生の宝物にするね」
「あのさ……このダイヤのネックレスをして、愛理沙には新しい人生をスタートしてもらいたいんだ」
「―――涼!」
愛理沙はブランコから立ち上がって、涼の胸の中へ飛び込んでくる。涼は軽く愛理沙を抱きとめて、軽く唇を触れ合う。
「涼……ネックレスを着けて」
愛理沙がネックレスを涼に手渡して、背中を向いて、項を見せる。きれいな項だ。涼は落とさないように慎重に愛理沙の首元にネックレスを着ける。
愛理沙が振り返って、涼のほうへ体を向けると、胸にダイヤのネックレスが輝いていて、愛理沙にとても似合って輝いていた。
「愛理沙とは、この公園で初めて出会った。だから、愛理沙とのスタートはこの公園からにしようと思ったんだ」
「素敵……私達2人の出会いの公園で……始まりの公園ね……私、この公園のこと一生、忘れない」
夕焼けが涼と愛理沙を真っ赤に染めている。愛理沙の胸のダイヤは陽光に照らされて、一段と美しい輝きを放っていた。
学校へ楓乃が戻ってきた。
楓乃は素直に愛理沙に謝ったが、楓乃は涼への想いを断ち切るためにグループから離れると宣言した。
愛理沙も聖香も楓乃のことを止めることはしなかった。
涼、湊、陽太の3人は少し離れた場所から女子達を見守っていた。
楓乃はふっきれたような顔で涼に手を振ると、違う女子のグループへと戻っていった。
涼には愛理沙しかいない。愛理沙しか選べない。
楓乃は別の男子を見つけたほうが良い。この結果で良かったと涼は思っている。
もう少し早く、楓乃のことをフッていれば、愛理沙と楓乃も仲良くできたのにと思うと、涼の中に少し後悔が残る。
7月に入り、期末考査テストが始まった。
涼は愛理沙にテスト勉強を深夜まで教えてもらって、なんとか期末考査テストを乗り切った。
これからは大学進学のことも考えていかなければならない。
愛理沙に相談すると、愛理沙もそのことで悩んでいたらしい。
夏休前に予備校を巡って、大学進学のために予備校に通うことにした。
最近、愛理沙はアパートに戻ってきてから、ピンクダイヤのネックレスをしていない。愛理沙に理由を聞くと、もう両親の責任を自分は負わないと決めたという。
「もう、あのバス事故のことで自分を責めたりするのはやめたの。お父さんとお母さんに申し訳ないもの」
「そのほうがいい。あの事故は俺と愛理沙では止めようがなかった事故だ。俺達が悔やんでも仕方がない」
「これからは涼と2人で前を向いて歩いて行くって決めたの。だから、お母さんのネックレスとはお別れするの」
そう言って、愛理沙は涼に向かって優しく微笑んだ。とても穏やかで澄んだ笑みだった。
今は、涼の仏壇の隣にピンクダイヤのネックレスを置いて、毎朝、愛理沙は拝んでいる。
とても愛理沙に似合っていたネックレスだったので、涼としてはとても残念に気持ちになった。そして愛理沙も、少し寂しい思いをしているのではないかと推測する。
テストが終わって、授業が午前中までになった。
涼は愛理沙に先にアパートへ戻ってもらって、涼1人で駅前のロータリー広場までロードレーサーで走る。
ロードレーサーを駐輪して、涼は1人で大型デパートの中への歩いて行く。
デパートの中に大きな宝石店のテナントが開店していた。
涼が宝石店に入るのは、これが初めてだ。
店内は女性陣が多く、若いカップルも多い。
場違いな場所に来たみたいで、涼は1歩後退って、店から出ようとする。
その時に穏やかな笑顔をたたえた、宝石店のお姉さんが声をかけてくれた。
「お客様…このお店は初めてでしょうか? 私でしたらご案内いたします」
「あ…ありがとうございます。俺……こういう店は初めてで……」
店員のお姉さんはにっこりと微笑んで、涼を安心させる。
「今日はどのようなご用件ですか? もしかすると……彼女さんのお誕生日のプレゼントかしら?」
実は愛理沙の誕生日は7月7日。すでに誕生日は過ぎてしまっている。
中間考査テストで忙しくて、愛理沙の誕生日のプレゼントを用意してあげられなかったことを、涼は後悔していた。
「実はそうなんです……色々あって……誕生日を過ぎてしまって……買ってあげたいんです」
「優しい彼氏さんですね。彼女さんが羨ましいわ」
店員のお姉さんに、そう言われて、涼は照れてしまう。営業トークとわかっていても、褒められるのは嬉しいものだ。
「どのような品をお探しですか? ご要望があれば、そこから商品をご紹介していきます」
「あの……胸にダイヤのネックレスが欲しいんです。できれば小さいダイヤではなくて、それなりに大きなダイヤを1つ」
「それでは、こちらの商品棚のセール品はどうでしょうか? 今、若いカップルの方に好評ですよ」
店員のお姉さんの笑顔が深まる。完全な営業の誘導だ。
「お姉さん……内緒で教えてほしいんですけど……宝石の値段って、下取りに出した時に驚くほど安い時があるじゃないですか? セール品はやっぱり安くなるんですか?」
急に店員のお姉さんの顔が引きつる。そして小さな声で涼にだけ聞こえるようにささやく。
「今のセール品は、在庫整理の品なの……お店には内緒だけど……きちんとした宝石を買いたかったら、保証書の付いた、きっちりとした宝石を買っておいたほうがいいわ……それにしも良く知ってるわね」
別に涼は何の情報も知らなかった。セール品という言葉にひっかかっただけだ。愛理沙に買うのであれば、セール品などではなく、きちんとした宝石を買ってあげたいと思っていただけだ。
店員のお姉さんが別の商品棚に連れて行ってくれる。値段は張るが、どれもセール品よりもデザインがシンプルに見える。
「実はね……デザインに凝ってるとデザイン代が高いの。ダイヤはカットと輝きで決まるから、シンプルなほうが値打ちがあることも多いのよ」
そんなにペラペラと宝石店の内情を話てしまっていいのだろうか? 店員のお姉さんの好意だと思って、黙って聞いて、後学のために覚えておこう。
「これを見たいんですけど……」
涼はデザインはシンプルだが、光り輝いているダイヤを指さす。
「お客様、良い品を選ばれたと思います。私もこの品なら自信を持ってお勧めできます」
丸型の少し大きなダイヤがきれいにカットされてキラキラと輝いている。ネックレスはプラチナだ。
涼が予想していたよりも、予算をかなりオーバーしている。
しかし、涼はこのダイヤのネックレスが気に入った。
愛理沙がダイヤのネックレスを着けている所をイメージする。とてもきれいで美しい。
「これを買います」
「ありがとうございます」
お姉さんは深々と礼をして、ダイヤのネックレスをジュエリーボックスに入れて、包装袋へ入れてくれる。
レジで支払いを済ませて、小さな紙袋を持って宝石店を出る。
デパートを出て駅前のターミナル広場に着いた所から愛理沙に連絡をして、いつもの公園で待っていてもらう。
駐輪場からロードレーサーを出して、急いで高台へ向かってロードレーサーを走らせる。
夕焼けの中をブランコに座って愛理沙が待っている。
涼はロードレーサーを公園の外に止めて、愛理沙の近くへ歩いていく。
「どうしたの……涼? いつも、一緒に公園に来ていたのに……急に呼び出すなんて?」
「すぐに愛理沙に渡したいモノがあって……誕生日、遅れてゴメン。改めて誕生日おめでとう」
涼は宝石店の紙袋を愛理沙に手渡す。愛理沙は紙袋の中を見て驚いている。
「これ……高かったんじゃないの?」
「まずは中身を見てよ……気に入ってくれると嬉しいんだけどさ」
愛理沙は慎重に包装袋からジュエリーボックスを取り出す。包装袋から出て来た保証書を見て驚いている。
そしてジュエリーボックスを開けて、ダイヤのプラチナのネックレスを見て、目を丸くして驚く。
「愛理沙のピンクダイヤのネックレス……とても似合っていたからさ。これからは買ってきたネックレスをつけてくれると嬉しい」
「ありがとう……とても嬉しい……一生の宝物にするね」
「あのさ……このダイヤのネックレスをして、愛理沙には新しい人生をスタートしてもらいたいんだ」
「―――涼!」
愛理沙はブランコから立ち上がって、涼の胸の中へ飛び込んでくる。涼は軽く愛理沙を抱きとめて、軽く唇を触れ合う。
「涼……ネックレスを着けて」
愛理沙がネックレスを涼に手渡して、背中を向いて、項を見せる。きれいな項だ。涼は落とさないように慎重に愛理沙の首元にネックレスを着ける。
愛理沙が振り返って、涼のほうへ体を向けると、胸にダイヤのネックレスが輝いていて、愛理沙にとても似合って輝いていた。
「愛理沙とは、この公園で初めて出会った。だから、愛理沙とのスタートはこの公園からにしようと思ったんだ」
「素敵……私達2人の出会いの公園で……始まりの公園ね……私、この公園のこと一生、忘れない」
夕焼けが涼と愛理沙を真っ赤に染めている。愛理沙の胸のダイヤは陽光に照らされて、一段と美しい輝きを放っていた。